番外編3 ヤンと幼馴染と日常と4
打ち合わせから出たところにヤンの幼馴染がたむろっていた。
「まだいたの?」
「彼女ちゃんを送っていこうと思って」
「お前はまだ仕事あるんだろ?」
そう言って幼馴染たちがニヤニヤし始めた。
こいつらに任せて悪いことが起こるとは考えられないが、万が一もあり得る。
と言うより、ヤンの子どもの頃の話をあれこれとリァンに聞かせたいのだろう。
それはそれでイイ迷惑だ。
「帰っていいよ」
ムスッとしたヤンから飛び出した言葉に幼馴染は唖然としたようだった。
「俺も用があって一緒に行くから、帰ってイイよ」
当てが外れたか、それともヤンも一緒につるめるからか幼馴染たちが連れ立って賑やかに行くことになった。
話の内容はさまざまだった。
ヤンのこともからかうけれど、悪意があるわけではない。
本当に仲がいいと思った。
「そういえば婚礼式はいつなんだ?」
聞かれた言葉に2人は顔を見合わせた。
そんな話も彼らにはしていなかった。
「来月の中旬」
「なんだよ、すぐじゃん!」
「俺たちも祝いに行くから!」
「どこでやるの!?」
「復興後の大きい祝い事だな」
「あちこちで浮き足立ってるのはそう言うわけか!」
「楽しみだなぁ」
「参考にするから後で色々教えてくれよ」
最後の言葉を発した幼馴染にヤンは「イイよ」と気軽に答えようとしたところ、はて、とリァンが思いついたようだ。
「予定があるんですか?」
問われてその幼馴染は頷いた。
「来年初めに予定していて…」
ヤンを含め照れている幼馴染に衝撃が走った。
「うん!!」
「まじか!?」
「相手誰!?」
「どこで知り合った?」
「どんな人?」
「なんで結婚しようと思った!?」
「相手はどこにいるの!?」
「えっと…お前たちも知っている人で…」
照れながら答える幼馴染にさらに話を聞き出そうと詰め寄った。
聞き出した相手の話に幼馴染全員で唖然とした。
「いやぁ!まじか!!」
「こっちいた時はあんなに仲悪かったのに!?」
「しょっちゅう喧嘩してたのに、変わるもんだなぁ…」
「実はそもそも仲が悪くなかったんじゃ??」
言われて結婚の決まった幼馴染は照れたように頷いた。
「あーやっぱり…他にいないだろ!?結婚するとか!結婚考えてるとか!!」
「あ、俺、結婚考えてる相手いるわ。俺は結婚したいけど、相手がなぁ…」
「俺も俺も。避難先での見合い相手と話がまとまった。結婚はもうちょっと先かな」
さらに2人が言えば、簡単に収まりそうにないほどの騒ぎになった。
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら店に行けば、ファナが渋い顔をしていた。
「久しぶりに会えて嬉しいのはわかるけど、あまりうるさいのは良くないわよ」
「ファナさん!!」
「こいつら俺らを差し置いてぇ!」
「彼女できたって!!」
「結婚するって!!」
「あらあら、相変わらず甘えん坊さんたちねぇ」
ファナにヨシヨシと言わんばかりに撫でられている幼馴染を見て、カド同様ヤンもムスッとしている。
そんな様子のヤンを見たことのなかったリァンは目を丸くしてしまった。
「ファナさんを取られた気分になるみたい」
「俺たち相手にされてないのにさ」
「厄介なやつだけどこれからも頼むよ」
結婚が決まったり決まりそうだったりの幼馴染たちにそんなことを言われてリァンはクスクスと笑い出した。
「それはそうと、あなたたち、おめでとうって言ったの?」
「言ってない…」
「言わなきゃ」
「うん…」
ファナに促されてファナに甘えていた4人が結婚が決まったり決まりそうな幼馴染たちに一斉に祝いの言葉をかけた。
「おめでとう!!」
「幸せになれよ!!」
「相手をちゃんと幸せにしろよ!」
「たまには俺たちと遊んでくれ!!」
「俺たちはちゃんと幸せになるよ」
「相手もちゃんと幸せにするよ」
「遊んでくれじゃなくて、さっさと相手見つけろよ」
「簡単に遊び歩けなくなっちゃうもんなぁ」
8人が団子になっている姿を見て、ファナがふふふと笑っていた。
「本当に子どもの頃から変わらないわねぇ…」
8人の幼馴染って書いてて訳が分からなくなる…




