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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
番外編

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番外編3  ヤンと幼馴染と日常と3

余談ってことでもうちょっとだけ続きます

工房長たちへの特注の話を終え、納期までの日程から逆算で炉の予定を組んでもらった。

「これは…成形よりも磨きの方に時間がかかりそうだな」

依頼は丸いガラスの板を凸形状と凹形状にそれぞれ加工したものだ。

「人の手でやるにはなかなか難儀だな…」

「俺たちが手伝うのもいいが…」

工房長と父親の言葉を聞いて、ヤンとリァンは顔を見合わせた。

「影の依頼なのでできれば他に人は入れたくないのですが…」

「そうは言っても、徹夜じゃ済まないぞ、これ」

「あの…実は…」

リァンが言ったのは箱に入れられて何やら大仰な器具が届いたことだった。

「どうやら研磨機のようで、この後店に行って検分してこようと思うんですが」

工房長と父親が唖然としている。

そんなものを送りつけてくるのはいったいどこのどいつだ、影の仕事をしていることを内緒にも誤魔化すこともできないだろと言いたげだ。

「まあ、器具が増えれば作業の幅が広がるし、いいんじゃないんですかね?」

そう言ったのはトランだった。

「手紙には、器具はその他作業に活用していい、って書いてありますし」

工房長と父親は煮え切らぬ様子だ。

「そんなに心配なら、うちの工房で引き取りますよ。ヤンの同期も帰ってきたし、俺たちはそろそろ子工房に帰ってもいいでしょう?」

「それだってお前たちに押し付けるようになっては…!!」

影の依頼など危険が伴うようなもんだ。

お前たちに押し付けるのも自分たちが抱え込むのも簡単に決め切れるかと言う。

「実質うちの工房は3人ですからね。内1人はヤンですから、俺と見習いくらいだったら、街中に放ってある影で問題にならないように対処できるんだろ?」

トランはヤンを見やった。

「そうなっていると聞いています」

「お前も人の采配ができる権限を持っているんだろう?」

「それなりには…」

自分がやるより影が自発的に動いてくれるに違いないけど、とヤンは思った。

「であれば、器具はうちの工房に置きますよ。成形だけこっちでさせてもらって、あいつらに業務を引き継いで、俺たちは戻ります。色と磨きができれば幅も広がるでしょう?」

「そうだな…」

「いてくれるのが当たり前になっていたな」

工房長と父親がそう言うのを聞いて、トランは腰に下げていた子工房の鍵を差し出した。

「今から器具の引き取りと設置に向かってもらって、いいですかね?ヤンの業務はいる奴らで分担するんで」

「ああ」

「そうだな」

「じゃあ、行ってこいよ。リァンも可能なら設置を手伝ってあげてくれ」

「はい」

トランの采配にヘラっと笑ったヤンとリァンを見て、その後、工房長と父親はトランを見やった。

「じゃあ俺はヤンの業務の割り振りを工房の連中と調整してきます」

打ち合わせ室から出て行く3人を見送って、工房長が父親に声をかけた。

「次期教育始めていいか?」

「ええ。姉と弟のせいで前に出たがらない性格だと思っていたんですけどね」

「なかなかイイ器だと思うよ。磨き甲斐がある」

「ガラスとかけてます?」

「そうだな」

工房長と父親は顔を見合わせて笑った。


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