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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第1章
66/167

64 終幕10  再会

完結済作品。週2回更新中!

協力してくれた隊商たちも本来の仕事へと戻ったあと、町の復興も町の住人たちだけで行いあらかた落ち着いた。

避難用の天幕も片づけられ、人々も日常へと戻っていった。

トランとヤンは工房を再開し、ヤンとリァンは二人の生活を始めた。

 リァンとヤンの婚礼式の準備に向けて姉夫婦は置いてきた子どもと母親を町に呼び戻した。

久しぶりの再会に父と母も安堵し合った。

「ちゃんとご飯食べてました?あなたはあの子たちと同じですぐ寝食忘れちゃうから。若くはないんですから、体を大切にしなきゃダメですよ」

「久々に会って小言を言われちゃかなわんな」

父は渋い顔をしていたが、母のニコニコとした笑顔を見て久々に元気が出た気がした。

改めて、寂しかったと、子どもたちはよく見ているもんだと思った。

母の腕に抱かれた2人目の娘はすっかり大きくなっていて、ファナの目から涙がこぼれた。

「あなたも元気そうでよかったわ、ファナ」

「母さん、本当にありがとう・・・この子もすっかり大きくなっちゃって」

「病気もしないし、よく眠る子よ。お兄ちゃんたちもお姉ちゃんもしっかりこの子を守ってくれたわ」

そう言って3人の孫を順に頭を撫でた。

「義母上、ありがとうございます。ご苦労を掛けました」

カドがそういうと、母親はカドにも余裕の笑顔をみせた。

「この子たちは本当にいい子だったわよ。問題に自ら首を突っ込んでいくうちのじゃじゃ馬娘の子どもとは思えないくらい」

「母さん!!」

「それにね、カドさん。あなたのためにこの子が走っていった時から色々と覚悟していたのよ。あなたたちが無事で嬉しいわ。でも、そろそろ私たちものんびりさせてもらいたいわ、ねえ、あなた」

夫であるファナの父親に笑顔で話を振ったが、夫は渋い顔を見せた。

「この人が俺たちを楽隠居させてくれるわけないだろ」

「何をおっしゃいますやら。義母上にはうちの子たちもトランやヤンの子も育てるお手伝いしていただきたいですし、義父上はこの町の重鎮で、まだまだ現役じゃないですか」

カドの笑顔を受けて、父親が妻に「ほらな」と言わんばかりの顔を向けると、

「あらあら、あなたたちだけじゃなく、あの子たちの子どもの世話もできるなんて、これから楽しみねぇ。ようやくヤンとリァンさんの婚礼式だものねぇ」

母親はそう言って楽しそうに笑った。


「みんなを守る」と言った長男は約束を守った。

弟妹がすっかり頼りきっていて、ファナとカドの姿を見るまでべったりとくっついていた。

彼はべったりとくっつく弟妹を両腕でがっしりと抱えていた。

弟妹がファナに抱きつき泣きついているのを、背筋をピンと伸ばし、にこりと穏やかな笑みをつくってみていた。

「ちょっと見ないうちに頼もしくなったな」

「父上。ご無事で嬉しく思います」

大人っぽい言い方は従兄たちにでも教えてもらったか真似しているのだろうと思った。

カドには胸を張って答えた長男も弟妹を胸に抱くファナが気遣わしそうに目を向けると少し目を潤ませた。

事前にカドから注意されたようにファナは必死で大人ぶろうとする長男を際限なく甘やかしてしまうと思って、表情を締め、笑みを浮かべた。

「僕は約束を果たせましたか?」

ファナに問うた最後の方には声に涙が混ざった。

「みんなを守ってくれてありがとう。あなたが誇らしいわ」

長男はファナに対して、目礼をした。

ファナは胸に抱きしめようと手を広げようとしたが、カドがそれを制し、長男の頭を優しく撫でた。

「君はまだまだ子どもの年だけど、大人にも難しいことをやり遂げたんだよ。感謝する」

カドはそう言って長男の前に腰を落とし、目線を合わせて、軽く頭を下げた。

そんな父親の姿に長男はびっくりして、姿勢を正した。

「こちらこそ、重要なお役目ありがとうございました…!!」

我慢していた涙が溢れて、ちょっと呆れたようにカドは微笑んだ。

そんな長男を慰めようとファナはその胸に抱いた。

「・・・母上・・・」

長男の涙がファナの胸元を濡らした。

胸に抱かれて何かに気付いたのか、長男は慌ててファナの胸から逃れた。

その顔が真っ赤になっていて、ファナはきょとんとしたが、見上げたカドの笑顔に長男はウッと喉を鳴らした。


次回更新は2/22です!

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