41希代の悪女 4
完結済作品。週2回更新中!
その後、日を置かず、リァンのふしだらな噂が町に流れ始めた。
「地味な女だと思ったが・・・」
「お前、そういうの好きだろ。地味なくせにって女」
「義姉の夫にも手を出していたらしいぞ」
「真昼間から絡み合っていたところを義姉に見つかって叩き出されたって話だろ?」
「見つかった後も何度もあそこの使用人に見つかっているらしいぞ」
「まじかぁ、使用人ともやってそうだな」
「離縁の噂が流れたな、すぐ落ち着いたが」
「そうなのか、工房で兄を含めた3人で日がな一日中楽しんでいたってきいたぞ」
「現場を目撃した兄を女が引き込んだらしいな」
「とんでもない女だな」
「俺が聞いたのは月夜の砂漠で隊商の隊長の上でのけぞってたってやつだが?」
「うわ、たまんねぇな、それ」
「で、地方官に飛んでいったのかよ、朝も昼も夜も甘く鳴くってな」
「やべぇな」
「天上の快楽って言うくらいだからな」
「相手してもらいたかったなぁ・・・」
人々の噂は下世話なほど早く広まるものだ。
「そういえば、その小鳥、地方官に甘えまくって、あれやこれや金使いまくってるんだって?」
「聞いた聞いた。西方のものを大量に取り寄せたらしいのよ!!」
「南方で採掘される珍しい石の加工品も、うちのが一生働いても手にできないような金額だったらしいわ」
「みてみたいわねぇ」
「ねぇ、一度でいいから、飾り立ててみたいわぁ」
リァンの散財の話も同時に広まった。
「その珍しい石の加工品だけを身に着けて、寝台で甘く鳴くのか」
「見てみてぇ」
「聞きてぇ」
「鳴かせてぇ」
「それな!」
ふしだらな毒婦の話と散財の話が合わされば、人のうわさなど止まることなどないのだ。
止まらずに尾ひれも背びれも人を経るごとに増えていく
事実、地方官はリァンに甘えられて、レンカとリーフェがリァンの側にいることを許した。
リァンがレンカとリーフェのために散財することも許した。
正直言って、レンカと服装や化粧の話をするのも、恥ずかしがるリーフェを人形のように着飾るのも楽しかった。
リーフェを送り込んだファナの正気を疑ったが、娘のいるファナはリーフェがいることでリァンが癒されるとわかり苦渋の決断をしたのだろう。
女3人で戯れることが増え、それとともに地方官がリァンに触れる機会は少なくなっていった。
リァンにとっては喜ばしいことではあったが、今、リァンに興味を失ってしまっては困る。
そこで、レンカと考え様々な方法で甘えてみた。
あっというまにレンカの手練手管に落とされてしまったのだから、ざまない。
試行錯誤する中で、地方官は劣等感の塊だということがわかってきた。
家柄が良くても権謀術数の中で生き残るには自分自身が相当優秀でなければいけないのだ。
優秀な兄弟に比べて格段に劣っていた地方官はともに学や剣を学んだ護衛の男にも激しい嫉妬をし劣等感を刺激された。
身分を笠に奴隷のように彼を虐げるのも気分がよかったが、あまり感情を動かさなくなったのが面白くなかったが。
感情を揺さぶってやろうと、彼の合格した官吏の席を父親に頼み込み金で買ってもらった。
彼の許嫁に寝所に引きずり込み、泣き叫ぶ許嫁に眉一つ動かさない男にさらに劣等感を刺激される。
武官に合格したとはいえ、ほとんど出世もさせず、自分の命令を聞かせるだけにしてきたにもかかわらず、泣きもしない護衛の男が憎らしいと地方官はリァンの胸に甘え、もう片方の手はレンカの腰にまわしていた。
だからこの男は劣等感を隠すために身分を笠にきてやりたい放題するのだ。
おびえる女を無理やり寝所に引き込み、抵抗すれば殺すと言い、逆らえないようにしていく。
そうして優越感を感じるのだ。
感情を失ったり従順すぎるのが好かないのは、優越感を感じられないから。
そして、抵抗し泣き叫ぶ女があるときを境に甘えるのを好むのは、自分を認めてもらえた、愛してもらえることに喜びを感じるのだろう。
そんな女がこの男に過去にいたとしても、女が考えた末の行動だったのだろう。
護衛の男は付き合いが長いため、よく知っているのだろう。
南方の輝石の飾り物、金剛石と呼ばれ細かくカットされたその石は非常に高価だったが、ザイードが去った後も仲介の商人を通して届けられた。
その値段に躊躇する地方官に目を潤ませて、「ダメですの?」と口先だけで甘えてみれば地方官はうなずくしかない。
化粧品も調度品も服も飾り物もとめどなくリァンのもとに届いた。
「うれしいですわ、旦那様。それで、次はこれが欲しいのですけど・・・」
そういえば渋い顔をするものの、また甘えればいい。その繰り返しだ。
次回更新は12/3です!