表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第1章
35/167

33 囚われの日々 2

完結済作品。週2回更新中!

ザイードは努めて平静を装うが、思わずの体で笑い声を漏らした。

地方官は不快げにザイードを見やる。リァンはまっすぐザイードを見つめ、一瞬視線を交わす。

「これはこれはかわいらしい小鳥で。毒矢を使うようには思えませぬな」

「これの前の男の噂か?あの男は小鳥を閉じ込めるわ、私が慰めているというのに乗り込んでくる野蛮な鬱陶しい男だったのだ。小さな籠しか持たぬくせに、返せと言ってきたこともあったわ」

「毒矢は地方官のもので?」

「私は毒矢など放たぬ。毒が得意なのは小鳥の親の仇だ。小鳥が私の良さを知り私のもとに自ら来ただけなのに、さらったような物言いは好かぬのだ。そうか、あの男死んだのか?」

リァンとザイードの心臓が鼓動が早くなり、ザイードは軽く目を伏せるにとどめた。少しうなずいたように見えた。

リァンは奥歯をぎりっとなるほどにかみしめた。

リァンは思わず冷たい声を出したが地方官はそれには気づかなかった。

「旦那様、お会いになったの?」

「お前の前の男か?お前を可愛がっているときに、2度来よって、一度目は追い払い、二度目は殴って捨て置いたわ。そうかそうか、これでお前も思い患うこともないな」

リァンは努めて感情を出さぬようにふるまった。

少しすねたように、まるで好きな男にちょっとしたわがままを言うようにふるまった。

「まあ、そんなこと言って、ずっとは一緒にいてくださらないくせに!旦那様は旦那様がいない時の私の無聊を慰める小鳥を私には下さらないのね!」

「お前は小鳥が欲しいのか?」

鋭い視線で地方官はリァンをねめつける。リァンはツンと拗ねたふりをする。

「旦那様がずっと一緒にはいてくださらないんだもの!今夜だって赤門の娼館に孔雀を愛でにいかれるんでしょう?わたしのような小鳥ではなく」

「ああ、娼館に顔を出すのも仕事の一つだ。お前の父の商売敵だが、あの男に会うのだ。女と二人ではなく宴を開くのだよ」

拗ねたリァンの機嫌を取るように地方官はリァンの肩を優しくなでる。

「今夜から明後日の朝までお戻りにならないのでしょ?一人で寂しくいるのはいやだわ」

リァンは目に涙がたまったかのように見せるため、目を瞬かせた。

「ここでの話、お前の父の商売敵はいろいろと良い薬をもっておってな。それを娼館で使ってみるのだ。お前に使った時に程よい加減を知るためにな」

それでも!とリァンは頬を膨らませ、プイッと顔を背ける。地方官は困ったようにリァンをなだめにかかった。

その様子を見てザイードは思わず吹き出してしまう。

「もしよければ、明日、無聊を慰める小鳥をお連れしても?」

地方官はそれは困ると言わんばかりだが、リァンは満面の笑みを浮かべる。

「まあ!うれしいわ!ねえ、旦那様、いいでしょう~。旦那様が私を心配するなら一人護衛を残してくださらない?そうねぇ、私を迎えに来てくださったときのあの人」

「ああ、あれか・・・あれなら良いか・・・」

地方官に見えぬようにリァンの目がきらりと光るのをザイードは見た。

「くれぐれも!連れてくる小鳥は男はダメだぞ!女にしろ!!」

「心得ております。小鳥への寵愛の深さ目の当たりにいたしてございます」

「旦那様、この者が見えるときは私も呼んでくださいね。この者は私の欲しいものを持ってきてくれそうだわ」

地方官はすりすりとすり寄るリァンに鼻の下を伸ばす。

リァンはすり寄りながらザイードに熱のこもらない視線をよこし、二人は視線を交わす。

「このかわいらしい小鳥に会いに私も日参したいところ。ですが、旅の身空につき、ご容赦を。この町による際には必ず土産付きでご挨拶に参りましょう」

「絶対よ、隊長さん。まずは、明日の小鳥楽しみにしてますわ」

顔の前で指を組み合わせ、リァンは満面の笑みだ。地方官は良いといったものの面白くない様子をリァンはみてとった。

地方官の気が変わらないうちにこの場を収めてしまおうと、怪しい手つきで、地方官の太ももに指を走らせ、甘さと熱をもって地方官の耳に吐息とともにつぶやいた。

「もうお時間があまりありませんわ。旦那様を独り占めにしたいのに・・・」

地方官はちらと近くの側仕えに視線をやると、「あと一刻ほどで娼館にいなければいけないお時間です」といった。

甘さと熱を目に込め、リァンはもう一押しと狂おしそうにつぶやく。

「旦那様、早く・・・」

地方官は我慢が出来ぬと言わんばかりに、立ち上がりリァンを寝所へといざなった。

リァンとザイードの強い視線が交わされ、怪しげにリァンはザイードに言う。

「では、明日ね?」

ザイードも努めて平静を装い、軽く会釈する。

「かしこまりてございます」

ザイードが辞すのと寝所の扉がばたんとしますのが同時だった。

ザイードは改めて女は怖いと思った。


次回更新は11月5日です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ