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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第1章
30/167

28 戻らぬ日々 1

注意! 暴力的な表現があります。苦手な人は気を付けてください

完結済作品。週2回更新中!


リァンが地方官に部屋に連れて混まれた後、宿屋の姐さんたちは急いで宿屋と職人街へと走った。

どうにかしてあの子を取り戻さねば、と。

職人街についた姐さんは工房を探し歩いた。そのただならぬ様子に職人街の女たちがヤン、トラン、ファナへの使いを走らせる。

工房では小間使いの少年がそわそわとしていた。

本来ならばリァンにくっついている時間だし、彼もいっぱしの護衛のつもりでいたのだ。

ただならぬ姐さんの様子に小間使いの少年もおろおろとし始め、ヤンを探しに工房を出ようとしたところでヤンに見つかった。

息せききって駆け込んできたが、宿屋の姐さんと小間使いの少年が悲壮な顔をしている。

「あんた!リァンの旦那だろ!」

「おう・・」

「来ておくれ!リァンが・・・赤門の娼館で地方官の部屋に連れていかれちまった!!」

ヤンの体で血が沸騰するのを感じた。

血が沸騰し、そのままの勢いで赤門の娼館に乗り込もうと一歩を踏み出したところに小間使いの少年に気づいた。

「兄貴か姉貴が来るかもしれない。ここにいてくれ。仕事の時間が終わったら工房のカギを閉めて、姉さんを宿屋に送ってくれ。いいな」

小間使いの少年はうなずくが、それでも納得がいかないようだ。

「リァンは大丈夫だよ。明日には元気な姿でお前を抱きしめてくれるよ。わかるだろ」

小間使いの少年は深く大きくうなずいた。そんな明日がちゃんと来てほしいと。


ヤンは赤門の娼館に向かって走った。

娼館に近づくほど人が増え、おかしな噂が飛び交っているようだ。

「地方官が宴を開いている」、「たくさんの女たちに言い寄られた」はまだいい。

「一人の小娘が地方官の憐れみを受けている」「手練手管で地方官を落とした」「女に薬を盛られた」などなど。

人が多くて赤門の娼館に入るのも一苦労だった。


「あんた、リァンの!!」

声をかけてきたのは宿屋の姐さんたちだ。

「早くおいで!!」

「あの子を助けて」

と状況が良くないことが分かった。

姐さんたちに案内された部屋は娼館の一番奥にある一番豪華な部屋だ。

姐さんたちが内カギを必死に壊しているところだった。

「どけ!!」

ヤンは扉に体当たりすると、内カギが壊れて扉がゆっくり開いた。

なかには一人の男がいて、ヤンをみてにやりと笑った。

「あの小娘は地方官様に可愛がられて悦んでいるぞ」

「だまれ!俺の女だ!」

ヤンは奥の続き扉に走っていき扉に体当たりする。

壊れた扉が開くと、聞こえてきたのは声の限り叫ぶリァンの声だ。

悲鳴ではなく悦びあえぐ声。

「はしたない声で鳴くではないか。よいぞ、もっと鳴け。ここはどうだ?」

地方官は闖入者に驚きもせず、下卑た声で楽しそうにリァンを鳴かせる。

「リァン!!」

リァンが組み敷かれ鳴かされている寝台に駆け寄り、男を殴ってやろうとしたとき、ヤンは後ろから複数の男に取り押さえられた。

暴れるヤンを組み敷いたのはどこにいたのか地方官の護衛である。

その顔立ちから東の都のものだとわかる。

護衛たちはヤンを押さえつけるだけでなく、地に伏せたヤンの顔を一発殴る。

「野蛮だのう・・・これだから野蛮人は嫌いじゃ」

地方官はリァンの体を抱き起こす。

乱れた髪が首筋から肩口に溢れ、柔らかく弧を描く体がぐったりとした様子で地方官にしなだれかかる。

地方官は寝台の側の水差しからカップに水を注ぎ、口移しでリァンに飲ませる。

「体が熱くなって私が欲しくなるだろう?」

リァンがはくはくと口を動かし、甘く地方官に絡みつき、喘ぎながら何やら口にすると地方官はニタリと満足そうに笑みを浮かべる。

「そうか、そうか、そんなに欲しいか。もう一度イかせてやろう。これで何度目だ。さあ、鳴け」

「やめろ!それは俺の女だ!!」

リァンの喘ぎ声をかき消そうと、ヤンはリァンの名を叫ぶ。

ヤンや護衛たちに悦ぶリァンよく見せてやろうと地方官はリアンの体を後ろから抱え込み、鳴かせ続けた。

護衛たちもあまりのことに目を背ける。

「リァン!!」

ヤンの悲痛な叫びとリァンの最後の悲鳴のような喘ぎ声が重なる。


リァンから体を離すと,興がそがれた様子で地方官は寝台を降りた。脱ぎ捨てた上着のその肌の上にかけると、ヤンすらも無視して、出ていった。

目配せ一つで護衛がヤンから手を離すと、ヤンは寝台に横たわるリァンに駆け寄った。

「リァン!リァン!!」

リァンは気を失っているのかピクリとも動かない。

かすかな息遣いだけが聞こえる。

ヤンがリァンを抱きしめようと肩に触れると、その唇から喘ぎ声が漏れる。

ぞくっとするようなヤンも聞いたことのない甘い声だった。

「まだ、しばらく薬が効いているから、今のうちなら天上の快楽が味わえるぞ」

後ろから響いたのは下卑た男の声だ。振り向きざまにこぶしでその顔を思いっきり殴りつける。

吹っ飛んだ男は地方官の護衛に対しても何やら命令していたが、護衛たちは無視していた。

ヤンのもとに宿屋の姐さんがリァンのものと思しき服を持ってきてくれ、丁寧に汚れた体を拭き、意識がもうろうとするリァンに服を着せてくれた。

姐さんの大粒の涙がリァンの服に落ちる。


次回更新は10月19日です!

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