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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第2章 砂漠の姫は暁をもたらして
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46 あぶりだせ

ユエに守られるようにして帰って来たリァンとアイシャ、ラズを見て騒然とした。

ゼノがつけてくれた護衛は無事に屋敷にたどり着いたのを見て、散り散りに状況を判断する情報を集めに行った。

慌てて駆けつけたザイードを見てユエはリァンを押し付けた。

「ヤンが!!」

レンカにラズを押し付けて今にも戻っていきそうなリァンをザイードは必死にその体を抱き止めた。

「離して!」

「ダメだ!」

「ヤンが!!ヤンが!!!」

「行っちゃだめだ!」

「ヤン!!!」

叫ぶリァンと押しとどめるザイードを見ていつか見た光景だな、と思ってユエは自ら駆け出した。

屋敷にいればまず安全だろう。

ザイード以外にもほかに何人も護衛がいる。

あんなに泣き叫ぶリァンを見たらヤンを連れてこなければと思った。


ユエが店まで戻るとほとんど意識のないヤンの側にいたのは屋敷の厨房の使用人だった。

ゼノが派遣した一人だ。

いつもこちらを伺っておどおどしていて、ゼノの人選をいぶかしく思った。

「ああ、あなたは!護衛さんがこの刀を抜いて意識を失ったところに居合わせまして…」

そう言って指さしたのはヤンの手元に転がった血に濡れた小刀だ。

柄の文様や刃の形が西でよく使われているものだ。

「ふらふらと立ち上がった後に、誰かが近寄りまして、この方がまた倒れて、手にこの小刀が…」

聞いてもいないのに状況をペラペラとしゃべりだす男をユエは一瞥した。

「それをもってついてきて」

「は…はい…」

ユエは周りの人に声をかけて、ヤンを屋敷まで運んでもらうことにした。

戸板を外して、ヤンを横にし、何人かの男たちに運んでもらった。


途中ライと合流した。

「屋敷に戻れ。彼女たちから離れるな」

「はい」

そう言って先に屋敷まで走った。

屋敷ではアイシャたちの部屋に固まっていて、カタカタと震えるリァンをレンカがぎゅっと抱きしめていた。

「ユエ!ヤンは?」

”ゼノ様。ザイード様、少しお話が”

そう言って部屋の隅で他のものに聞こえないように状況を話した。

ザイードとゼノは話を聞いて、にやりと嫌な笑みを浮かべた。

”なるほど。西も出張って来たと見せかけるか…。ユエ、もし我らに容疑がかかるようなら容赦なく断罪しろ”

”ゼノ様…”

”この際だ。あぶりだせ。それにこの義兄さんの手のものは義兄さんの指示がなきゃ動けない無能はいないだろ”

”当然だ”

「承知しました」

ユエは二人に頭を下げた。


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