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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第2章 砂漠の姫は暁をもたらして
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45 襲撃

ヤンのソワソワの理由にユエが思い当たったとき、周囲の風の動きが変わって、おもむろにアイシャをライに向かって突き飛ばし、ラズを抱えたリァンをかばうように抱きしめた。

「やばい、殺られる!」と思った時には体に何かがかぶさってきたのはわかったが、体のどこにも痛みは走らなかった。

自分の背後からうめき声が漏れた。


「ヤン!!」

抱きしめてかばったリァンが叫んだ。

どうやら自分たちをかばったのがヤンだとわかったらしい。

パッと視線をあげれば、そこには突き飛ばしたアイシャがライの腕の中で庇われていた。

襲撃に対してアイシャとラズの安全を最優先に体勢を立て直したいけど、ヤンがかぶさってきたせいでユエは身動きが取れなかった。

アイシャの無事を確認した後、いち早くあたりの状況を確認したライがユエに指示を下した。

「ユエ!!ヤンが負傷した!!毒の可能性もある!ゼノ殿の手のものと共にお嬢様とラズ、リァンを連れて屋敷に戻れ」

「はい!!」

ユエはなんとかヤンに押しつぶされている状況から抜け出し、アイシャに駆け寄った。

アイシャを抱え起こし、ケガがないかを確かめ、抱えるようにしてリァンの元に戻った。

「ヤン!!」

リァンがヤンを呼びかけ、ヤンの意識を確認していた。

意識があるなら、そこまで重症ではないだろうが、汗をかき呻いているのは毒が原因かと思いを巡らせる。

「ユエ、俺はいい。3人を連れていけ…」

「ヤン!!ダメ…」

ラズを抱えていた手をほどき、ヤンの汗をぬぐおうと額に手を伸ばしてきた。

「大丈夫。行って、リァン」

「でも、ヤン…」

「俺は大丈夫だから。ラズをしっかり抱いているんだ。ユエ、頼んだ」

リァンは護衛の優先順位が低いのだから、しっかりラズを抱えていなければいけないとリァンの腕にしっかりとラズを抱かせた。

毒が塗られているのか、目が回ってきたのをヤンは感じた。

ユエはラズを抱えるリァンを抱き起した。

「ヤン…ユエ、ラズ様を…」

荒い息でユエに乞うリァンの手を握り、ラズをしっかりと抱かせた。

「しっかり抱いていて、ラズ様を守って」

「…ええ…」

そうは言うものの、不安そうなラズに目をくれることもなく、リァンの視線はヤンに注がれている。

ユエは周囲を見渡し、目配せで何人かのゼノの手のものが護衛を買って出た。


ヤンは店から出ていくリァンのうしろ姿を見送って、懐に入れていた瓶の蓋を指ではじいて取って中身を飲み干した。

ふらふらと立ち上がりながら落とした瓶を足で踏みつけ粉々に砕いた。

視線が定まらず、息を切らし、ふらふらしていれば、聞いたことのある声が聞こえてきた。

「毒に慣れているのか…運がいい兄ちゃんだな…」

そう言ってふらつくヤンを殴りつけて、その場に倒した。

一本の小刀を出して、ヤンの背に刺した後、引き抜いてヤンの手元に転がした。

あたかもヤンが自分で引き抜いたかのように。

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