43 街歩き
街歩きに出たアイシャははしゃいでいた。
そんなアイシャを眉間にしわを寄せてみているのがヤンとライ。
しれっとして静かにそれでいて周囲の警戒を怠らないユエ。
腕に抱いたラズが可愛くて仕方がないリァンである。
ラズはリァンの名前を呼んで、リァンが視線をラズに向ければ満面の笑みを向ける。
その笑顔にキュンとしたリァンを見てぎゅうっと抱きついている。
二人も屋敷において来ればよかったと周囲が思うくらい、お互いにお互いしか見えていないのだ。
ラズはそれなりの重量があるため、ずっと抱いていると腕が痛くなってしまうので、時々ユエやヤンに代わってもらうのだが、ユエはともかくヤンをラズは気に入らないらしい。
リァンから受け取ると必ずヤンの顔をぺちんと叩くのだ。
ぺちんと叩いて、自分の方が上だとリァンにふさわしいと見せたいのだろうが、ヤンがイラっとすればぐずって、リァンに助けを求めるのだった。
ぐすんぐすんと泣きながら、リァンの胸にすり寄ってちらっとヤンを見て生意気そうに目を細めるから余計にイラっとさせられた。
「そんな風にイライラしないで。小さな子どものすることよ」
そうは言われても、自分のものにべたべたと触られるのは気に入らない。
「小さくても男は男だ…」
「しょうがないわね…」
リァンが呆れたようにつぶやいても、ユエやライが表情を崩さず呆れていても、その考えだけは絶対に譲らない。
「ねえ、この店を見てもいい!?」
アイシャが足取りも軽く小間物の店に入っていった。
追いかけるようにリァンとユエが入り、ライはヤンに周囲を警戒するように目配せをして、少し距離をとって小間物の店に入った。
当然、客を装って何人かのゼノの手のものも入ってきた。
アイシャはかんざしや腕輪や首飾りを見て、物珍しそうだ。
それはそうだろう。
皇太子妃と言えば、宝石やら真珠やらがふんだんに使われた金や銀の装飾品を身に着けていたのだろうから。
市井のものが使うような小間物はどう見ても素朴で質素で、子供のおもちゃのように見えるかもしれない。
「3人でおそろいのものを身につけたいわ、レンカお姉様やシェーレ様に贈っても喜んでいただけるかしら?」
そんなことを言うアイシャはじろじろとリァンやユエの装飾品を見ている。
「リァンは耳飾りと首飾り、あと胸元にもブローチがあったわね?」
「はい」
「旦那様からの贈り物?」
「はい」
「いいわねぇ」
そう言いながら、はにかんだリァンを見て、アイシャはニヤニヤとした。