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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第2章 砂漠の姫は暁をもたらして
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砂漠の姫は暁をもたらして 15

「久しぶりだな、リァン殿」

ライに名を呼ばれてその視線に鋭さが宿し、ライを見やった。

「…会いたくなかった」

久しぶりと挨拶もなくぶっきらぼうに答えたリァンを見てライは目を細めた。


リァンがライにぞんざいな態度を見せることにすっかり慣れっこなのだろう。

あの時は、その態度にライが苦言を呈することもなく、二人の間になれ合うことなどないことを周囲に見せつけるのに好都合だった。


「まったくだ。だが、こうなってはリァン殿の助力を請う以外にない」

2人はそのまま視線だけを絡ませた。


二人は同志だった。

ほとんど言葉を交わさず、だからと言って体も交わさず、周りの状況と視線だけでお互いの言いたいことがわかるほどだった。

あの時はあの時、今回はちゃんと協力しないことには自分たちが危険にさらされることくらいはリァンはわかっていた。


「リァンと呼んで。『殿』はいらない」

「承知。俺のこともライ、と。敬称は不要だ。紹介しよう、彼女はユエ。俺の手のものだ」

敬称は不要と言われてホッとした。

どんな事情があろうと今更この男を「ライ様」などと呼びたくない。


ライに声をかけられて、ユエはスッとリァンの前で腰を折った。

「ユエと申します」

「リァンです」

「彼女には君や二人の護衛についてもらう。ヤンやザイード殿と共にいることが多くなる」

「あなたは?ライ」

「俺は東が送り込んできた刺客の排除と黒幕のあぶり出しだ。必要に応じて君にはおとりになってもらうやもしれぬ」

「あなたはいつもお願いばかりだわ」

リァンのツンとした態度とライのそんなリァンを宥め包み込むような雰囲気にユエとヤンは落ち着かなくなった。

そんなことをリァンとライは知る由もない。


「市井のもので君ほど西の言葉が堪能なものは、そうはいないだろう、よく教えてあげてくれ。西に行ったら俺たちの手など届かぬからな」

リァンはハタっと気づいた。

「私が西の言葉をつかえるって知っているの?」

「もちろん。ザイード殿あての手紙をしたためただろう?東へ行き俺を探れとも言っていた。俺の目の前で。屋敷でも西の反転文字をよく書いていたし、刺繍もしていたな」

リァンの背筋に寒いものが走った。


あの男にはわからなかったし、誰もわかるそぶりを見せなかったから、暇つぶしや手慰みと称して、西の反転文字を書き、刺繍を施していた。

それらはファナへの連絡用にリーフェから物売りに扮したガラス工房の小間使いの少年に渡していた。

リーフェも少年も自分自身も誰にも見とがめられることなどなかったから、さすがに上手く行きすぎだと警戒はしたが、たぶん目の前のこの男に守られていただけだろう。


この男の前では無駄だろうが一歩後ろに下がり距離を取った。

「君が西の反転文字をザイード殿に残したから、君を陰謀に引き込むことに決めたんだ。君は見事にやり遂げた。俺の目に狂いはなかった。今回もうまくいくだろう」

ライは逃げようとするリァンの腕を取った。

ライの吐く息がリァンの首筋に届き、ゾクッと背を震わせ、それを見たライは視線をリァンの体に走らせた。


全てはライ様の手の内の中…かもしれない…?

ライとリァンはいいコンビだと思うんだけどなぁ…

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