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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第2章 砂漠の姫は暁をもたらして
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砂漠の姫は暁をもたらして 5

「ここまでであれば、我々はただ傍観していればよい話だったんだがな…」

ゼノは話を切って、一同を見回した。

ゼノは東の都に送り込んだ手のものから皇太子の妃の醜聞などはとっくに手に入れていたのだろう。

そして、傍観を決め込むつもりだったようだ。

だが、事態が変わったらしい。

ヤンは変わらずイラついて、「なぜそんなのにかかわるのか」と言いたそうだ。

「この件に我々ましてやザイードさんがかかわる理由は一体何ですか?」

「ここから話がややこしくなるので聞いてほしい。婚礼式の翌日に私もザイード殿に相談されたのだ」


東の皇太子の妃と不義密通を働いたリュート弾きは西の有力部族の長の息子であった。

リュート弾きは子どものころから音楽の才にたけ、優しく少々気が弱かった。

周囲の女性に可愛がられ、本人も少し女性的な気質が見られ、逆に部族の男としての義務や職務を嫌う傾向にあった。


部族間や周囲との争いが続いてきた西においては、妻や子、一族、財産のみならず、自身や部族の名誉をいついかなる時も守れるように男は強くあるべきと考えられていた。

男子に教育されるのはその「強い男であるべき」ことばかりだった。

その考えに彼は幼いころから鬱屈した思いを抱えていた。


彼は「強い男であるべき」だけでなく、部族の長とならなければいけないという周囲の圧力に耐えきれず、成人を前に出奔した。

興行の一行に加えてもらい、各地を旅をしていた。

西の有力部族の長は出奔したリュート弾きには興行一行の中に間諜を潜り込ませ、随時情報を部族長の元に届けていた。

部族長には他にも息子がいて、跡取りは困らないはずだったのだが、部族間や他地域との争いやケガ、病気などであっという間にすべての跡取りがいなくなってしまったのだ。

部族の規則で、直系の息子がいる間は養子も取れず、このままでは部族を存続させるのも大変なことになると考えていたが、リュート弾きには部族の元に帰るという選択肢はないようだった。

そんな折、部族長の耳に入ったのが、リュート弾きが東の皇太子妃と不義密通を行い、生まれた子どもの話である。

どうやら男の子のようだと。

リュート弾きが戻らないのであれば、男でも女でも孫を手元で跡継ぎに育てるしかない、と考えた。

男なら部族を率いられる強い男に、女なら一族を率いられる強い男とめあわせようと。

それが、残りの人生をかけた自分の役割であると、部族長はおもった。


ヤンはこんなにキレやすいタイプではなかったはずなのに、これもある意味成長?

西の部族長の思惑はどうなる?

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