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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
第2章 砂漠の姫は暁をもたらして
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砂漠の姫は暁をもたらして 4

「女性は我らが失脚させた皇帝の皇太子の妃とその母親だ。あの地方官の実の姉と姪にあたる」

「義兄上!!」

ヤンが瞬間的に怒りを覚え、ゼノに掴み掛かった。


ヤンに胸ぐらを掴まれてもゼノはピクリともしなかった。

涼しげにヤンを見やった。

ヤンができるのは掴みかかるまでだとゼノはわかっていた。

怯えも焦りも見せず受け流せば、ヤンの血の気も引き、話を聞くようになるだろうと。


「ヤン!兄上から離れなさい!」

「ダメよ、ヤン。怒りに任せないで」

実際、義兄やファナは焦ってヤンを押し留めようとしたが、ゼノの「愚か者」と言わんばかりのヤンに向けられた表情でヤンはゼノの胸ぐらから手を離した。

あれだけ自分の弱点を曝け出すようなことはするなと散々言われて、抑える訓練を施されていたのに。


「大変失礼しました、義兄上」

「よい、赦そう」

ゼノは胸元を整えて、カド、ファナ、ヤン、リァンと順番に見やった。

カド、ファナ、ヤンはこんな話は受ける必要などないと言わんばかりではあるが、リァン1人が静かだった。

だからと言って怯えている様子もない。

静かに考えて、それで少し納得できなそうな様子だ


「お義兄様。なぜその人達を西に逃すのですか?西の言葉を教えるということは、その人達は西で生活するツテがあるということですよね」

「その通りだ。少し長いが聞いてほしい」


皇太子のまた従姉妹以上離れるが縁戚のある妃が懐妊したらしいという噂が流れたのは今から2年半ほど前だ。

喜ばしいことに関わらず、困ったのは皇太子はこの妃に渡りがなかったことを知っている妃の側近達だ。

妃が不義密通を働いた結果だ。

しかも不義密通の相手の検討もついていた。


いくら縁戚のある妃とはいえ、妃の不義密通を許しては周囲に示しがつかない。

しかし、まだ本当に懐妊したかもわからない噂の段階である。


妃は実家の力を使って、体調が悪いという言い訳をし、実家の別荘近くで商家の娘を装って静養することにした。

静養しているうちにもみるみる腹は大きくなり、家族や侍女たち関係者の目にも妃が不義密通を犯したのがまるわかりだった。

妃はあらゆる手段を講じて皇太子の耳に入らぬようにした。


やがて生まれた子どもの顔を見たとき、誰もが不義密通の相手に確信をもった。


宮廷の生活に飽き飽きしていた妃が皇太子が地方に行っている間に呼び寄せた西の興行師のうち寝所に引き寄せたリュート弾きだった。

皇太子がいないうちに昼夜関係なく何度もむつみ合い、興行師のリュート弾きはともかく妃は本気の恋に落ちたようだった。


興行師はとうに都を離れ、連絡する術もないし、相手からも連絡はない。

子が生まれ、いよいよ妃の不義密通が皇太子の耳に入り、怒り心頭の皇太子が兵を派遣し、都に戻され罰が下されそうになったその時に、例の暴動から派生した皇帝の失脚が起こった。


皇帝の一族もろとも囚われた。

当然、皇太子もである。

この妃が難を逃れたのは、どこに静養していたか明らかになっていなかったからだ。

当然のごとく別荘も暴かれたが、そこには妃の姿はなく、それらしい娘も子どもの姿もなかった。


失脚させた皇帝のほうのお話が今後も入ってきます。

元皇太子妃が難を逃れてやってきます!

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