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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
番外編
111/167

星を読む 2

いつものように往来でうずくまっていると、1人の男が少年に声をかけた。

「おー見つけた。お前、この前俺に面白いこと教えてくれた坊主だろ?」

少年は首を傾げた。しばらくして合点がいった。

往来でうずくまって耳を澄ます。

その時に聞こえてくる話を覚えていて、別の人に話すのが彼が生きるためにしていることだった。

大抵は鼻でせせら笑われるが、時々面白がって、食べ物を分けてくれたり金をくれる人たちがいる。

この男も面白がった1人なのだろう。

「おかげで研究費をもらえることになってな、礼をしたいんだが、お前1人か?」

どうやら何かの研究者らしい。問われたことには頷いた。

「親は?」

「いない。兄弟もない。ひとりだ」

「そうなのか?どうやって今まで生きて来たんだ?」

「1年くらい前まで親みたいな人がいた…」

「その人は?」

「死んだ…」

少年はぎゅっと小刀を握りしめた。

男がその小刀を見るとそこに彫られた紋章に、ああ、とため息をついた。

この少年の家族、親戚、果ては身近な使用人たちも生きていないだろう、と。

少年のいう「親みたいな人」は身近な使用人の1人だったか、彼の乳母だったのかもしれない。

「そうか、なら、お前俺の助手にならないか?」

「はぁ?」

「そうだ、それがいい」

男は勝手に決めて少年の手を引いた。

少年は男が彼に無体を働く気がないことをその手の温かさで知った。

男は少年を町外れにある男の研究所へと連れていった。

男は昼間は寝ているくせに陽が落ちる頃に起き出して、一晩中星を見上げ、毎日星の位置を紙に書き記していた。

少年は字を教えてもらいながら、紙を日付順に並べ、星が日々どのように動くのかをさらに大きな紙に書き写さなければいけなかった。

なんの目的かわからなかったが、1年も経つ頃には星がぐるりと回って元の位置に戻るものや何周もするモノ、ほんの少ししか動かないモノや惑うものがあることがわかった。

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