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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
番外編
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番外編6 ファナの嫁入り 8

カドの兄嫁が亡くなったと伝わってきたのはそれからしばらくしてからのことだ。

お腹の子も亡くなったのだとか。

2人が祝言をあげる1週間ほど前のことだ。

子供が生まれるタイミングに父親がわりが必要と考えられ、このタイミングでの祝言だった。

「カド様、大丈夫かしら?」

そんなことを食事中にポツリと言うと父が憮然としている。

どうにもカドを工房から追い出した日からカドの話になると機嫌が悪い。

兄嫁を引き受けなければいけなかったカドがファナを妾にするつもりでいると思っているのだ。

弟たちも父の不機嫌を感じ取ってチラリと姉を見やった。

「心配か?」

「立て続けにお葬式だから、大変だなと思って」

心配と言えば父が機嫌が悪くなるような気がしたのだ。

「少し落ち着いたら工房長の名代として、挨拶に行ってくれと言われている」

「私が?」

父が頷くのが見えて、ファナは首を捻った。

「俺もついていくし、この前みたいなことにならんように、葬儀が終わった後に店に挨拶をしにいくだけだ」

この前みたいなことは一体どれを指しているのだろうと思った。

2人で会うのは気まずいが、父を伴っての挨拶なら、いいだろうと思った。


葬儀からしばらくたって、ファナは父を伴いカドの店に顔を出した。

工房長からは手土産を持たされていた。

「ファナ」

立て続けの葬儀にカドはすっかり疲れ切っていた。店があわただしいのは葬儀後だからというわけでもなさそうだ。

「先日の葬儀には列席しなかったので、工房長からお詫びとお悔やみを言付かって参りました」

「ああ、いや、こちらこそ大変失礼なことをしてすまなかったとお詫びを伝えてほしい。特に君や親御さんには不快な思いをさせてしまった。申し訳ない」

ファナから手土産を受け取り、店の者に渡した後、いつも通りを取り繕うもののカドには覇気がなかった。

そして、ファナとファナの後ろに立っている父に深々と頭を下げた。

先日の謝罪を直接二人にさせたいがために、ファナが名代になったのだ。

父は変わらず憮然としているが、あまりのあわただしさが気になったようだ。

「いったい何があったんです?」

「ええ、ちょっと、長兄の事業に不備があったのとその他問題がありまして。せっかく来ていただいたので茶でも出したいのですが、これから次兄と先達が来て話し合いがあるのです」

「そうですか、お忙しいところ失礼しました。ファナ、帰ろう」

「はい・・・カド様・・・」

ファナが声をかけたとき、店に入ってきた男の雰囲気に一同の視線が集まった。

ぴりついた雰囲気のティオベだった。ファナを見て、雰囲気を緩めた。

「ファナ、久しぶりだね。カドが失礼なことをしたと聞いたよ。申し訳ないことを」

「ティオベ様。いいえ。カド様からも先ほど謝罪をいただきました。ティオベ様からの謝罪は不要です」

ティオベはこの娘は変わらずカドを善良な男と思っているようだと感じた。

男のズルさなど若いうちはわからないし、そこが魅力に映ることもあるのだ。

ついでだからその初心さに少しつけ込んでおこうとティオベは思った。


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