0. プロローグ
これは砂漠の町の話。
本当にあったかもしれない話。
本当はなかったかもしれない話。
昔々あるところに、ウェイという若者とツェンという犬が人々を幸せにするために旅をしていました。
ある砂漠の町で、ウェイは一人のとびきり美しい娘に助けられました。
まるで月の女神のようだとウェイとツェンは思いました。
ウェイは娘に尋ねます。
「君の幸せは何?」
娘は答えます。「欲しいものを欲しいだけ手に入れることよ。貧しいのはいや!」
ウェイとツェンはカバンからお礼を出しました。
ウェイは口紅を、ツェンは風鈴を。
娘は夢見心地になりました。風鈴の音からは貧しいけど好きな人と一緒にいる自分の姿を。目の前が口紅の色に染まると豪華な着物を着た自分の姿。
ウェイは聞きます。「どっちが君の幸せ?」と
「もちろん、こっちよ」と娘は口紅をとりました。
その後娘は、恋人ができましたが、職人、商人、旅人、お金持ちのようなたくさんの男の人とも付き合いました。
ある日、町の領主が変わりました。
領主は大変女好きでした。町のたくさんの娘に会いましたが、美しさにひかれウェイの口紅を塗った娘を妻に選びました。
何年か経って、ウェイとツェンは砂漠の町に戻りました。
町は大変荒れていました。領主が妻の欲しいものばかり買い与えられているからです。
町の人はどんどん貧しくなってしまいました。
領主の妻になった娘はウェイとツェンにあって驚きました。
ウェイは悲しそうに娘に聞きました。「君は今幸せ?」と。
娘は答えます。「もちろんよ、旦那様は優しくてなんでも買ってくれるのよ」と。
娘は町の人を苦しめる悪い女の人になっていました。
ウェイとツェンは町に戻りました。
「君の幸せのために」と言って、食べ物や水や薬、武器を出します。
だんだん武器をとる人が増えてきました。ウェイとツェンは悲しくなりました。
「なんで、なんで?」
町で暴動が起きました。領主と妻である娘が町の人に殺されました。町の人みんなが苦しみました。
ウェイは悲しそうです。ツェンも悲しそうです。
だって、ウェイが出すものを取るとみんな幸せにならないのです。
「どうして、みんな幸せにならないの?」
ウェイは聞きます。
だれも答えません。
ウェイは娘を砂に埋めました。風鈴を飾りました。風にちりんと風鈴が鳴りました。
娘が好きな男と貧しいけど幸せそうに一緒にいる姿が夕闇に浮かびました。
娘は幸せそうです。でも幸せになれませんでした。
ウェイとツェンはこれからもずっとずっと旅を続けます。
100年でも、1000年でも。
たくさんの人々を幸せにするために。
これは砂漠の町の話。
本当にあったかもしれない話。
本当ではなかったかもしれない話。
これより、この物語の真実を語る。