雷神娘と天翔ける白竜 序
かつて大空を我が物顔で飛ぶ魔獣あり。その名はズゥツウ。彼の者こそ、空の魔王なり。
姿は鷲に似るが、山のごとき巨躯の持ち主なり。
今日もその巨躯を空に浮かべ、大気を震わせ、羽ばたくごとに嵐を呼び起こす。天空より振り下ろされし爪は大地を引き裂き、地を這う者は皆、空の魔王に平伏した。
だが、この空を支配せし魔王に挑む者あり。名をエルカロンと言う。始祖トブ=ムドールの盟友にして、豪胆なる戦士なり。
彼の者、空の魔王を討たんとするも、エルカロン、その身に翼無し。いかな英雄豪傑と言えど、その剣、その槍、いずれも空を舞う魔王に届くこと能わず。
これを憂慮せし始祖、一計を謀る。
すなわち、竜の背に、盟友を乗せることを。
エルカロン、盟友よりの提案を受け、研鑽を積みて竜の心を掴む。竜の名はネイデル。漆黒の鱗持つ竜族の長にて、秩序なき天空を案じる者なり。
かくして、翼を得たエルカロン、天空へと舞い上がる。
始祖もまた、城を空に浮かべ、これを追う。
力を合わせし英雄達、ついに空の魔王の眉間に槍を突き立てる。
ようやくにして、天空に秩序が戻る。これを喜ばぬ者、地上にただの一人もなし。
竜騎士エルカロン、汝こそ、空の秩序を取り戻す英雄なり。
その雄姿、《天空の騎士》と皆が讃えるなり。
彼の者の意志はその名と共に、今日も空を駆ける。
『始祖と大英雄達 ~ 竜騎士エルカロン ~』より




