雷神娘と不死者の祭典 序
第二部『雷神娘と不死者の祭典』掲載を開始しました。
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昔々あるところに、火を噴き上げる山がありました。山の頂より昇る炎の柱は天を貫き、地響きと共に大地へ火の玉を降らせてきた。大地の神々の怒りを体現したかのようなそれは、そこに住まう人々を悩ませておりました。
嗚呼、誰かあの火を止めてはくれないだろうか、神の怒りを鎮めるような奇跡でもおきないであろうか、人々はそう願うばかりであった。
そんなある日のこと、一人の女性が山の麓の村にやってきました。だが、それは人ではありません。悪魔の類でした。蝙蝠のような黒い翼を生やし、鋭い牙や研ぎ澄まされた爪が諸々を威圧しました。
「わらわは魔王である。汝ら、ひれ伏すべし。さすれば、常しえの悦と楽を与えてやろう」
そう要求する魔王であったが、人々は従いませんでした。なにより、いきなり現れた魔王などより、火を噴き上げる山の方が恐ろしかったからです。
「いきなり現れて魔王だなんだと言われてもよく分からない。本物の魔王だというのであれば、あの吹き上がる火の柱を止めてみせろ」
村長は荒ぶる山を指さし、魔王にそう告げました。
お安い御用だと魔王は勇んで火を噴き上げ、災厄をまき散らす山に向かって飛んでいきました。程なくして、先程までの荒ぶる山が大人しくなり、吹き上がる火が止まってしまったではありませんか。
人々は嬉しさのあまりその場で跳び上がり、口々に喜びの声を上げました。
山から魔王が下りてくると、村人達に告げました。
「火は鎮めた。さあ、我が手に収まるがよい」
魔王は両手を広げ、村人達に服従を求めました。しかし、村人はそれを拒絶しました。
「わしは力を見せてほしいと言っただけで、服従するとは一言も言っておりません。山の火はお前さんが勝手に止めただけ。わしらがお主に従う道理はない」
村長はそう告げ、さっさと立ち去るようにと魔王に言い放ちました。
魔王は怒りもせず、逆に大笑いをしました。
「なるほど。確かに約しておらぬうちに、事に及んだわらわの失策であったわ。よかろう、この村を“従える”のはやめにしよう」
そう言うと、魔王は翼を広げ、空へと舞い上がりました。
「一つ、おぬし等に伝えておこう。火は鎮めたが、かわりに冥府魔道へ通じる道を開けておいた。今宵は宴ぞ。祭りぞ。踊って、食らいて、酔いしれよ」
果たしてその夜、山からあふれてきたのは、大量の不死者でした。火は鎮めど、死は湧き起こり、人々の悲鳴とともに夜を血で染め上げました。
人々が死に飲まれる様を眺め、魔王は愉悦に酔いしれました。
「死を忘れるな、人々よ、生者の赴く先は、必ず死である。死を伴侶とし、終の寝床に横たえよ。嗚咽と悲鳴が我が糧なり、永遠なる苦痛を与えよう。さあ、悶えよ、苦しめよ、今宵と言わず、永劫の祭典を開こうぞ」
魔王の悦なる叫びは今宵もまた響き渡る。
~ 第二部 序章 終~




