43 一人くらいは受け入れくてる誰かがいるでしょう
あれからレリルさんは毒突いてみたり、泣いたりを繰り返しました。
ちなみに私は淡々と業務をこなしていました。
午前と午後で完全に立場が逆転しました。
「なあレミリエル、レリルどうしたの?」
午前はあんなじゃなかったよね?とユリーラさんが問いかけてきます。
「あれば本来のレリルさんなんじゃないですか?」
「だとしたらヤバすぎだろ」
「個性って事でいいじゃないですか」
大多数と違う事をしたら、気味悪がられて除け者にされる。
私が人間界に来て少なからずそういう雰囲気を感じとったことはあります。
とても愚かと思います。
私は引きこもりでしたが、他の天使から除け者にされたり嫌がらせをされた事は一度だってありませんでした。
もし私が人間界で暮らしていたのなら、精神的にもキツかったかもしれません。
「自分と違うからって気味悪がってはダメですよ?」
「いや、そんなことはしないけどさ」
ユリーラさんは「私だって男みたいな喋り方で虐められたこともあるし、そういうのはしねえよ」と頭を掻きながら言いました。
「なら安心です」
ユリーラさんはレリルさんに近付き、次々と指導をしていきます。
「だからこうで〜」
「説明が端的過ぎます。人に伝えるということを意識して下さい」
「てめっ、生意気言いやがって⋯⋯」
周りから見たら完全に喧嘩にしか見えないやり取りに、お客さんは皆近寄らないようにしているのが凄く伝わります。
そんなこんなで、お客さんの入りが悪くなりつつも無事職場体験を終えることができました。
「今日はありがとうございました」
「そこそこいい体験になりましたよ」
レリルさんくっそ上から目線ですね。
「お?レリル?」
「何ですか?」
「生意気」
ユリーラさんはレリルさんの頭をコツンと小突きました。
「あと、人手普通に足りないから手伝える時あったら来い」
「私は付き添いだったし、次はお客として来ますよ」
「私もそんな感じで」
私とレリルさんから同時に拒否られるユリーラさん。
ここで「はい!またお世話になります」とでも言っておけば終わりよければすべてよしでいけたでしょうに。
「ケッ、そうかよ帰った帰った」
ユリーラさんは不貞腐れたようにひらひらと手を振って私たちに「帰れ」と伝えます。
何となく釈然としないまま、私たちはその場で解散しました。
私とレリルさんは帰路に着きながら話しました。
「レミリエルさんのお陰で、凄く自然体でいられた気がします!」
「ああ、それは良かったです」
とんでもない毒舌を生み出してしまいましたが、それで人と関わるのが苦ではなくなるのならばいいでしょう。
「それと、私あの店でまた働こうと思います」
「え、ならさっきそういえば良かったじゃないですか」
ユリーラさん、へそを曲げてしまいましたよ。
「あの人の前で言うの、恥ずかしくて」
レリルさんは少し頬を赤らめて言いました。
ツンデレですか。
「でも想いは伝えたければいけませんよ?今からでも言ってきたらどうですか?」
ちなみに私だったら来た道を引き返すのを面倒くさがって行かないと思います。
「まあ、行くも行かないもレリルさんの自由ですが」
レリルさんは少し考え込んでから、あの時のように意を決して息を吸いました。
「素直にっ、ならなきゃ!」
私に「今日はありがとうございました!」と手を振りながらレリルさんは来た道を急いで引き返していきました。
「頑張ってくださいね」
聞こえないと分かっていましたが、ポツリと呟いて姿が見えなくなるまで手を振りました。
さて、この後二人はどうなったのでしょうね。
私には知る由もないですが、たまにリリエル書店を訪れるんですよ。
そうしたら稀に今日は店員が多いなと感じる時があるんです。
ふふふ、そういうことなのかも知れません。
少しのきっかけで人生思いっきり変わったり
さらけ出したらさらけ出したで一人くらいは受け入れてくれる人がいるんじゃないかなって思って書きました。
大多数に属してると安心はしますが、逆にその裏で少数で日々不安に押し潰されながら生きている人もいます。
優しい世界であって欲しいですね。




