39、紅葉と自称天使さん
ブックマーク等々お願いします。季節は秋
少し肌寒く感じるも、咲き誇る紅葉の美しさに全てを許してしまえそうな気がするこの頃。
私、レミリエルは紅葉が沢山見られるという通りに来ています。
「わぁ、どれも綺麗ですね⋯⋯」
ついついうっとりとさえしてしまいます。
そして最高な事に辺りには誰もいない。私一人の独占空間です。
「迷えるものよー迷えるものよー我が導いてやるぞよー」
前言撤回、どこからか至福の空間を壊すような馬鹿っぽい大声が聞こえてきました。
「あ、お主悩みとかない?」
「はぁ、私ですか?」
紅葉の陰からいきなり人間の少女が飛び出しきました。
「お主」と語りかけられた時点で周りには私しか居なかったのですが、一応期待を込めて聞いてみます。
「いや、お主しかおらんじゃろ」
ああ、やっぱり私でした。
紅葉を楽しみに来ただけなのに変なのに捕まってしまいました。
「天使なこの私がお主の悩みを解決に導いて見せよう」
「天使、ですか?」
天使と名乗る彼女。年齢は私と同じ程度でしょうか。
確かに身なりは長い白髪に紅の瞳、白衣装。
天使と言っても差し支えない見た目です、ただ。
「いやアナタ人間ですよね?」
「はっ!?天使だし!」
「ちよ、怒らないでくださいよ。見たら分かりますって」
天使特有のこう、自分で言うのもなんですが神秘的な雰囲気を一切感じられません。
「天使の輪、見せてください」
「あ、ちょっとそれは今都合悪くて」
「なら天使の羽は見せられますよね?」
「都合悪いね」
最後の方はもはや投げやりでした。
勝手に天使の名を語るとは、一体この女性は何が目的なのでしょう。
「とにかく、私は天使なの!」
えぇ⋯⋯。
目の前でプンスカと怒り出す自称天使さん。かける言葉も見つからず呆然と怒っているさまを眺めていると「何か言ってよ!」と更に怒られました。
「それでは、自己紹介を」
「早く言ってよ!」
「私の名前はレミリエル。天使です」
自称天使さんはぽかんと口を開けたまま喋らなくなってしまいました。
恐らく天使というワードに反応したのでしょう。
「あ、え、あ、貴女天使なの!?」
「ふふふ、天使です」
「こ、ここここれはとんだご無礼を」
こが異様に多いです。というか幾ら相手が天使だからといってそんなにかしこまらなくても。
「じ、実は私天使様に憧れていて」
「ほほう」
「それでその、形だけでも近付きたいなと」
「あの、そんなに畏まらなくてもいいですから」
自称天使さんは大変緊張しているというか、天使の振りをしていた事に罪悪感を覚えているようで「地獄行きだけは勘弁してください」と泣きついてきました。
「とりあえず、涙拭いてください」
「ありがとう、ございます」
自称天使さんに天使の優しさで持っていたハンカチを差し出しました。
「ちーん!」
自称天使、鼻かみやがりました。
「地獄行きですね」
「そ、そんなぁ! あ、ハンカチお返しします」
当たり前のように鼻をかんだハンカチを私に返却してくる自称天使さん。どういう神経をしてるのか。
「それもう使えないので貴女に差し上げます」
「え、やったぁ。天使様の私物ゲット」
若干引きましたが、まだ大事な事を聞いていませんでした。
「貴女の名前はなんですか?」
このままだと、ずっと自称天使さんのままですよ。
「わ、私の名前はレリルです!」
レリルさんは「以後よろしく」と頭を下げました。
え、関係このまま続く感じですか?
「よろしくお願いします」
まあ、ツッコミを入れるのも野暮というか単純に自分でも感じ悪いなと思うのでこちらも頭を下げます。
「それで、天使様にお願いがあるんですが」
「お願い、ですか?」
ああ、よろしくとはこのお願いに関係があるのでしょう。
「まあ、とりあえず聞くだけなら」
紅葉が咲き誇る木の下で、また一つ見知らぬ誰かとの物語が始まる予感がします。




