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30、不幸な代償

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 私は、まだ幼いリシャさんにも分かるようにゆっくりと、伝わる様に説明をしました。


 話終えると、リシャさんは悲しそうに俯きます。その手には、クマのぬいぐるみが握られています。


「僕、やっぱり神様に嫌われていたんだね」


 目に涙をうかべるリシャさん。


「ち、違います。神は無作為に運命を決めるんです。決してリシャさんが嫌いだからとかでは⋯⋯」


 ああ、駄目ですよね。こんな子供に分からないような言葉を使って、どうして私はこうなのでしょう。

 天使なのに、泣いている子供を笑顔にさせることもできない。


 自分への劣等感が激しく襲います、幸いにリシャさんの言葉で醜い感情は消えました。


「それなら良かった。ありがとう、天使様」


 子供らしい元気な表情を取り戻せているようには見えませんでしたが、泣かないでいてくれるだけでホッと胸を撫で下ろします。


「どういたしまして。ところで、リシャさんは元気な身体になったらまず何をしたいですか?」


 本人が回復後何をしたいかで、代償にする物はと大きく変わってきます。

 なのでこれは最も大切な質問でしょう。


「まずは、身体が動かしたいかな。皆みたいに、外で遊びたい」


 彼の切なる願いに心が痛みます。

 外で遊びたいのなら、足、腕は必要でしょう。


「ならそれ等を代償にはできませんね」


「うっ、うん⋯⋯」


 代償ときいて、リシャさんはびくりと震えます。いけない、と自分の口を塞ぎます。


「大丈夫です、大丈夫」


 何の根拠もない言葉を並べて、落ち着いてもらおうとリシャさんの頭を優しく、腫れ物に触るかのように丁寧に撫でました。


「あの、身体の他だと何をそのダイショウにすればいいの?」


 リシャさんは恐る恐る聞いてきます。


 なので、ありのままを応えました。こればかりは誤魔化しようがないのです。


「記憶です。一度、今日の事も、お父さんお母さんの事も全て忘れるんです」


「そんなの、怖いよ」


 リシャさんは目に涙を浮かべます。とてつもない理不尽な運命を定められた挙句にこんな事を言われるのですから、泣きたくもなるでしょう。

 私だったら当に気が狂っています。


「お父さんもお母さんも貴方の事は忘れません。貴方が記憶を無くした後もずっと傍にいてくれますよ」


 こんな事、子供に言ってもそうすんなりと理解はして貰えないでしょう。

 まだ若いのだから、今からならやり直せるなんて言っても。その子供には少ない年月が人生の全てなのですから、本人としての重みは周りが思っている重みとは全く異なるものでしょう。


「お父さんとお母さんは、いなくならないの?」


「いなくなりませんよ。ずっとリシャさんと一緒です」


 それを聞いて安心したのか、クマのぬいぐるみをギュッと握っていた手が緩んでいます。


「もしも、もしもだよ?」


「はい、何でしょう」


「もしも、本当に僕の記憶が無くなって自由に動ける様になったら」


 リシャさんは覚悟をするように息を吸います。


「僕と、お外で遊んで欲しいな」


「引きこもりだったので外遊びは苦手ですが、リシャさんが望むならお付き合いしますよ」


 リシャさんは少し微笑んで「僕の病気を治して」と言いました。その顔は、口角は上がっているのに恐怖交じりで少し歪んでいました。


「任せて下さい⋯⋯」


 私は一旦リシャさんの部屋を後にして、両親のいる部屋へ向かいました。


「あっ、レミリエルさん。どうでしたか?」


「単刀直入に言います。リシャさんの命を救うには、リシャさんは記憶を失わなければなりません」


 私の言葉に、お二人は息を飲みます。誰よりも大切にしてきた我が子に忘れられるのですから、いくら命が助かるとしても喜び難いものがあるのでしょう?


「そ、それで⋯⋯命は、命は助かるんですか?」


「それはお約束します。私を信じてください」


 リシャさんの両親は、何やら小声でブツブツと相談をし始め、次第には言い合いになっていました。


「あの子はまだ八歳なのにあんなに苦しい思いをしてきたのよ!記憶を失うだんてそんな⋯⋯」


「じゃあリシャに死ねというのか!それにまだ八歳ならこれからの人生やり直せる!」


 そんなに大きな声で言い争って、自室にいるリシャさんに聞こえていたらどうするのでしょうか。


 これ以上リシャさんに苦しい思いをさせたくないのなら、まずは感情を抑えるところから始めて頂きたいですね。親の喧嘩とは中々に聞くに耐えないものですから。



「落ち着いてください。今取るべき選択は、生かすか死ぬかです」


 酷な話ですが、アナタたちの言い争いなんて二の次なんですよ。


 お二人は落ち着いた様で、二人で顔を見合わせ合ってから勿体ぶるかのように口を開きました。


「記憶は⋯⋯諦めます。どうか、リシャの命を救ってあげてください」


 ご両親は、本当にその選択肢は取りたくなかったのだと分かるくらいに渋々と私にお願いをしてきました。本人の意思も固まってきているようですし、そろそろ始めるとしますか。


「分かりました、お任せ下さい」


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