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29、不幸な少年

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 どうも、レミリエルです。いきなりですが、ある少年の話をしましょう。


 カトリの街に一人の恵まれない少年がいました。


 その少年は幼い頃から身体が弱く、友達と遊ぶどころか外に出る事さえままなりませんでした。


 外に出ると日の光が彼の身体を蝕むそうで、いつも薄暗い部屋でベッドに一人でした。

 少年の家は特別裕福ではありませんでしたが両親が無いお金を振り絞って、医者に何度も診察をして貰ったそうです。


「特段、悪い所は見当たりませんね」


 いつも言われるのはこの言葉でした。最後にはどの医者も原因不明と匙を投げ、少年から離れていきました。


「ごめんね、丈夫に産んで挙げられなくて」


 少年の母親はいつもすすり泣きながら言いました。

 少年は母親に泣いて欲しくなかった為に困ってしまいました。


「お母さん、僕は大丈夫だから」


 大丈夫では無いのに、次第に母親に泣いて欲しくないがために嘘を重ねるようになりました。父親にも同様にです。


 少年の人生はとても辛いものでしたが、神は彼にさらなる不幸を与えました。


 少年の病状が悪化したのです、激しく咳き込み、胸が苦しくなり意識を失う事は日常茶飯事でした。


「このままでは、うちの子は死んでしまう」


 少年の両親は決して、少年を見捨てようとしませんでした。その時、カトリの街に悪魔が現れました。


 悪魔は一度現れたら数百、数千の命を奪い取っていきます。そこで家族はこのまま死ぬのもありかもしれないと本気で死を覚悟していました。


 けれども悪魔は勇敢な天使によって退治してしまいました。死を覚悟していた家族は大層落ち込みましたが、同時に僅かな光を見出しました。

 そう、天使の存在です。元々カトリの街は人々の信仰心の強い事が有名な街。


 少年の家族は「天使に頼れば、この子の病気は治るかもしれない」


 という事で、現在私は少年の両親に依頼されてその少年の家にお邪魔しています。


「ああ、天使様、どうかこの子をお救い下さい」


 少年の母親がベッドで眠る、まだ幼い少年の頭を撫でながら私に懇願をしてきます。そして、父親も同じく私に何度も頭を下げてきました。


 医者に何度も見放されて、私を手放したら終わりだと思っているのでしょう。自分たちより遥かに年齢が低い私に対してとても下手にでてきています。


 それ程までに、我が子を救いたいのでしょう。


「分かりました、私はまだ彼の症状を間のあたりにしていないので少し時間がかかるかもしれません」


「それでも構いません、命さえ救っていただければ」


 ご両親の希望は少年の命を救う事ですか。


「分かりました。彼の命は、救う事をお約束します」


 妙に含みのある言い方にご両親は怪訝そうな顔をしていますが。本来、約束とは果たせる範囲で行うものです。

 私が彼をなんの代償もなしに救えるとは限りませんから。


 自分の中で、最低限は命は救う事というラインを決めておきます。


「それでは、少しの間彼とお話させて下さい」


 両親は部屋から出ていき、私と少年を二人きりにさせてくれました。


 ここは少年の部屋でしょうか、本が数冊と衣装台がある程度で、幼い少年の部屋らしさは感じられません。


「なんというか、殺風景な部屋ですねぇ」


「う、んん⋯⋯」


 私の独り言のせいか、眠っていた少年は目を覚まします。


「ん、お姉ちゃん⋯⋯誰?」


「初めまして、私の名前はレミリエル。お母様とお父様からのお願いでやってきました」


 少年は私を見ると口をパクパクさせて、驚いた様子です。


「もしかして天使様? 僕の病気を治してくれるの?」


「はい、天使様です。治せるように努力しようと思います」


 少年はギュッとベッド横に置いてあったクマのぬいぐるみを抱きしめます。


「クマさん、好きなんですか?」


 私はその場にしゃがみこみ、少年と同じ目線で語りかけます。無理に笑顔を作って怖がられた経験があるので、等身大な私で話しかけます。


 少年は口篭りながらも答えてくれます。


「あの、クマはあんまり好きじゃない」


 え、あんまり好きじゃないんですか。


「でもこのぬいぐるみは好きなんた」


 少年はぬいぐるみを再び抱きしめます。

 少年の髪は、私と同じ白髪で翠色の瞳をしています。

 外に出ていないからか、肌は随分と白いです。傍から見たら姉弟と勘違いされてしまうかもしれません。


「そうだ、お名前を聞いていませんでしたね。良かったら教えてくれませんか?」


「僕の名前、リシャ」


 少年は細々とした声で名乗りました。


「リシャさんですか。いい名前じゃないですか」


 怒られるかも、と思いましたが勇気をだしてそっと頭を撫でてみます。


「んん⋯⋯天使様、どうして頭を撫でるの?」


「え、どうしてと言われましても。可愛いから?」


 リシャさんは照れた様に俯きました。あらあらです、シャイなんでしょうか。


「コホッ、コホッ」


「ちょ、大丈夫ですか?」


 突然リシャさんが咳き込み始めました。慌てて背中をさすってあげます、効果があるかどうかは知りませんが。


 そろそろ本題に入った方が良いですね。


「リシャさん、本題に入ります。私はこれから貴方の病気を治します」


「う、うん」


「ただ、そう簡単には治りません。病気を治すにはかなりの代償が必要です」


 リシャさんは代償?と首を傾げています。

 そうなりますよね、貴方の病気はただの難病なんかではないんです。


 一目見て分かりました、貴方は治療不可の病気にかかり、命を落とすという理不尽な運命を神から定められているんです。


 これは神や天使にしか気が付けないことです。


 神が定めた運命はそう簡単には覆りません。

 なので、リシャさんの両親がいくら名医を呼んだところで何も変わりません。


 運命を変えるには、天界の者、つまり私がリシャさんの何かを代償にしないといけません。


 例えば、今までの記憶を代償にするとか。













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