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第3話「魔法の書と新チーム」

『魔法の書』と呼ばれる本がある。

 魔法使いによって不思議な魔法を込められた本。

 魔法使いは新たな魔法を生み出す以外ーーつまり既存の魔法の習得の際にはーー魔法の書を用いる。


 魔法の書なしで魔法を覚えるのは極めて難しい。

 新たな魔法の開発と手間自体は同じなのだから。

 新たな魔法の開発なんて、国指折りの魔法使いたちの領域だ。


 つまり、魔法の書なしで魔法を習得できるものがいるならーー

 ーーそれは国指折りの魔法使いと同等ということになる。






 チャチャとシクロは組合にてチームを結成した。

 その際チーム名を決めなければならないのだが、もめた挙句保留になったことは割愛しよう。


 少しだけ言わせて貰えば、中二病と意見が合うはずもないと。


 二人は現在魔法店の前に着いたところだ。


「魔法店って私初めてよ」

「我もほとんど来たことがないな」

「シクロお金ありそうなのに意外だわ。もしかして貧乏性だったり?」

「財はあるが魔法店で買うべきものもない。我は最初に買った魔法の書を盗まれるなんてマヌケは働いていないからな」

「ムムムムム」


 ぐうの音も出ない様子のチャチャ。


 煽った挙句正論で負ける。

 絵に描いたような小物ムーブを意識せずとも出来るチャチャはある意味天才だ。


「じゃあ、入るぞ」

「ええ」


 シクロもチャチャも声に震えが見られる。

 緊張しているのだろう。



 魔法店は名前の通り魔法に関する道具類を取り扱うお店だ。


 そして魔法に関する道具類というのは、高い。武器や鎧よりよほど高いのだから、一般人や並みのハンターではまず手が出ない。


 だから魔法屋というのは貴族とか宮廷魔術師とかが使う、用は金持ちのお店という印象が蔓延してる。


(落ち着きなさい私。前世で親に高級レストランに連れていかれた時のことを思い出すのよ)


(そういえばマナーがなってないとかで店の人に注意されたわね、優しく)


 前世のことを思い出すことで冷静を保とうとするも、逆にダメージを食らうチャチャ。

 本人は自覚していないが彼女のオツムはやや残念である。



「いらっしゃいませぇ〜」


 店員の落ち着きのある声が店内に響く。

 店の構造自体はそこいらの道具屋と同じだ。


 だが、まるで同じには見えない。

 たしかに棚に商品が陳列されているというのは同じなのだが。


 きらびやかな絨毯のひかれた床。

 天井にはお城か?と突っ込みたくなるシャンデリア。

 壁際や部屋内に置かれる棚は金ピカで宝石があしらわれている。


(こ、壊したら弁償かしら?いやその時はシクロに押し付けて逃げれば)



「魔法の書はここか。貴様適正属性は覚えているか?」

「あーあったわね、そんなの。だいたい適正だったわよ。たしか光以外のはず」

「つまり、闇、火、水、木、風、雷、氷、地、の八属性が適正か」

(適正の多さがイコール才能ではないが……)

「使いたい属性はあるか?」

「水とかはどうかしら?使えたら魔法で作った綺麗な水飲めるし」

「理由はどうあれ、本人の望むものこそ力を発揮するのが常だ。水を中心にした魔法書を買うとしよう」

「へぇ、どれどれ〜」


 ピシャリ。

 チャチャの動きが止まる。


「ねぇ、なんかこれ高くない?話に聞いてたことあるのよりケタが一つ多いんですけど」

「これは難易度の高い魔法まで乗っているものだからな。貴様のよ言ってるのは初心者用であろう」

「私、自信ないわよ。初心者用でいいんじゃ」

「ふん、我と共に道を歩むならばそのくらいは最低限の力だ。努力に励むが良い」



「ありがとうございました〜」


 買い終わってすぐ所有権を持つためにチャチャは血を魔法の書につけた。

 流石に同じ過ちはしない。


「さて、今日のところは解散だな。また明日朝に組合で落ち合おう」

「ええ、わかったわ」

「あと、宿題だ。明日までに魔法を一つ習得しておけ。でなければ本の代金を払ってもらう」

「な!聞いてないわよ!?」

「ではさらばだ」


 シュバっとポーズを決めて立ち去るシクロ。

 もちろん代金の話は単なる脅しに過ぎない。怠け者を努力させるために釘を打っただけだ。





 ★






 ど、どうしよう。

 もう夕方よ。

 魔法一つ習得しろなんて無理だわ。無理無理。


 そもそも、代金の話なんてトンズラすれば……。

 でも、私のためにこんな高い本を。

 期待してからてるのよね。私なんかに。


 努力しなければ、今度はシクロに捨てられるだけ。


 よし。


 そもそも魔法の書なしでも、無意識で魔法使えてみたいだし、余裕だわ余裕。



 とりあえず宿屋に帰ろ。


 あ。

 あんまり深く考えてなかったけど、私とドレアとおんなじ宿じゃない。部屋隣だし。

 男組は宿違うけど。


 魔法覚えたら見せつけてやるわ!ふふん。



「はぁぁぁ、疲れたわ」

 宿屋に着いた私はまず、ベッドにタィブをかました。

 硬い。前世のベッドと比べるとやっぱり数段は落ちるわね。

 一応女の子だし、安全なそこそこの宿には泊まってるんだけど。



 さて、魔法の修行と行くわよ。

 よし。


 ペラ。

 魔法の書を開く。


 情報が頭に視界に流れてくる。


 これが魔法の書の力っ!


 どんどん魔法のことが理解できていく。

 凄い、けど苦しいわ。情報が多すぎて酔っちゃうわよ。


 まず一つずつ試しましょうか。


 水生成(ウォーター)


 心の中で私が魔法の式を思い出す。

 魔法は式を構築することで発動するらしいわ。

 同じ魔法でも式は状況によって変化するわ。

 例えば私の使う魔法なら湿度や温度もかなり重要みたいね。


 こうして、こうして、こうっと。


 よし!成功だわ!

 空中に拳大の水が発生する。

 水は重力に従い地面へと落ちる。


 でも、意外と魔法って覚えるの簡単なのね。


 次は、これかしらね?

 水圧弾(アクアバレット)

 拳ほどの水を生成し、高速で放つ魔法。

 説明によると威力はあんまりないみたいだし、使っても大丈夫そうね。



 水の生成までは同じ方法で、ここから力をめいいっぱい加えて……。


 もっと。もっと。んんー。

 よぉーし。


 極限まで力を加えた水の弾を私は壁めがけて放った。


「はぁ!!」


 つい力んで声が出てしまった。恥ずかしい。

 シクロのせいで昔の血(中二病)が……。



 ドォォォォォォン。

「きゃぁぁぁぉぁ!!!」


 あ。


 今起きたことをそのまま話すわ。

 私が放った魔法が宿の壁を破壊したのよ。


 嘘よ。

 説明にはビンタくらいの威力って書かれてのに。


 わ、私じゃない!

 魔法の書が悪いわ!嘘つき!

 これ書いたの誰なのよ!


 著者はプルパーノね。

 名前覚えたわよぉ〜。



「な、なんなの!?これチャチャがやったの!?」

 隣の部屋、つまりは壁を破られたドレアが空いた穴から声をかけてくる。


「ごめんドレア、ちょっと魔法の練習したら思ったより威力あって」

「もぉ驚かさないでよ。というかこれ修理代……」


「チャチャ。隣人の罪を背負うのは一緒に背負うもの。そうでしょ?」

「それって、普通背負う側が言うものじゃ」

「お願い!!ドレア」

「仕方ないなぁ」


 この娘大丈夫かしら。

 優しすぎない?心配だわ。


 今日の魔法の訓練はこれくらいにしましょう。



 私とドレアで宿屋さんに壁のことを報告。

 ご飯を食べて寝たわ。



 ちなみに宿屋さんに話したら、私だけが犯人だってバレたわ。


 理由聞いたら普段の行いだって。



 とりあえず弁償はチームメイトのシクロに頼むことになったわ。


 私お金ないし!




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