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第2話「中二病でもチーム組みたい」

 私たちはハンター組合へ来てた。



「脱退の手続きは済んだぞ」


 無慈悲にも黄色い悪魔は私に告げる。

 ーー死の宣告を。


 悪魔にとって人の生き死になど些事でしかないのだろう。


 まるで書類にささっと必要事項を記入してきたかのような軽さだ。


 なん!たる!無慈悲。

 あぁ、神よ、私を救いたまえぇ〜。



「チャチャ、大丈夫かの?」

「え、ええフカグリさん大丈夫よ」



 ふぅ、少し自分の世界に入ってしまっていたわ。



「ところで、私を養ってくれそうな人っているのかしら?」

「チームを組んでくれそうな人なら心当たりが」

 ドレアがそう言って一人の男に視線を向ける。

「うむ。逆にいうと彼以外は希望が皆無じゃが」

 フカグリさんも同意する。



 ハンターはチームを組んで活動するわ。

 一人より二人、二人より三人の方が出来ることは多いから。


 でも、何事にも例外はあるのよ。

 ハンターの中でも一人で活動する人もいるの。


 単純にチームを組む相手が見つからなかったり、一人が好きだったり。


 二人が示した私のチームメイト候補、彼も一人で活動をしてる。


 名前はシクロ。

 《一人チーム シクロ》

 この街では有名な万者よ。


 一人チームというのは何も一人で活動する?シクロを馬鹿にした者ではないわ。


 シクロは強い。

 少なくともこの街にはシクロに釣り合うハンターはいない。


 その上シクロは、

 剣術も支援魔法も攻撃魔法も罠や敵の探知も、

 一人で済ましてしまうらしいわ。


 《一人チーム》

 これは一人で一チームの仕事を全てこなすから、ついた異名。



 いくら自身溢れる私でも、

 シクロと私が釣り合ってるとは思えない。


 私は魔法使いなのに魔法も使えないポンコツ。


 というか三人には秘密にしてるけど、多分今後も魔法は使えないと思うし。



 でも、ドレアやフカグリさんもほかに候補がいないって言うし。


 行くわよ。まずは第一印象!

 ニコニコっーと。



「魔法使いのチャチャよ。実はチームを組んでくれる人を探してるんだけど……」


「我は白き光の導きに従いしホーリーナイト、シクロ。貴様がチャチャと呼ばれしものか」


 うん。うーん。

 まぁ〜、組合で見かけるし性格は知ってたんだけどね。ねぇ?


 シクロを一言で表すなら中二病。この世界に中二病の概念はないみたいだけど。


 いちいちシュバッて感じにポーズとるのがイタイ!すごくイタイわよ!


 かくいう私も前世では能力とか妄想してたから思い出して恥ずかしいぃ。

 漆黒の聖典(黒歴史ノート)のことは記憶の隅へやる。



「では貴様の力を見せてもらおう」

「え?力って言っても私魔法とか使えないよ?よ?あ!でも子守とかの依頼ならーー」

「ーー討伐だ。ついてくるがよい」


 ハンターには依頼という制度が存在している。ハンター組合を通じて依頼人の出した依頼を、ハンターが自由に受けられるの。


 ハンターは武力集団とはいえ、依頼は様々なのよ。

 一番多いのは護衛。

 だけど、 子守とか庭の手入れとか家事とか簡単なのもある。大抵日本の労働基準法で言えばアウトな給料だけど。


 依頼は不定期で安定しない。

 だから、ハンターの収入の中心となるのは討伐と採集と呼ばれるものよ。


 討伐は怪魔と呼ばれる怪物を倒して、組合を通して素材を売るの。


 採集については、珍しい草木とか鉱石とかを取ってくるの。

 組合で買い取ってもらうのが基本よ。


 さて、説明を聞いて採集なんて楽勝じゃん?

 とか思ったそこのあなた!


 ハンターの行く採集って怪魔たちがウロウロしてる危険地域だからね



 はぁぁ。

 討伐か、不安だわ。


 もちろんハンターになって四年もたつし、

 討伐は幾度となくやってきたわよ?


 でも私は戦ったことないの。

 後ろで頑張れ〜って応援してきただけ。



 でも、この人私の力を見たいとか言ってるし。

 あいつら私が強いとかほら吹いたじゃない?一種の嫌がらせで。

 でも、心当たりあるっていったのドレアだし無いわね。ドレアは優しさと砂糖と素敵なもの出来てるもの。



 にしても、気まずい。

 何か話そうかしら?

 趣味、は聞いたら長そうね。中二病的に。

 好物とかが安パイよね。



「着いたぞ」


 つくの早いわね?

 んーここは。


「洞窟?」

「知らんのか?ここの洞窟は地形の関係で定期的に怪魔が発生する。我の光の力があれば洞窟の暗闇など無為に散る。貴様は後ろで見ておけ」


 シャキーン。

 効果音をつけるなら多分そんな感じ。

 ちょっと自慢げなのが可愛い。


「あ、私の力は?見てるだけでいいの」

「以前のチームと同じでいい。何か見てる以外にしてたならそうしろ」

「強いて言うなら心の中で応援はしてたわ」

「なら、我を応援せよ小娘。ん?なぜ嬉しそうなのだ」

「へぇ?なんでもないわ」


 べ、べつに小娘って言われて喜んだんじゃないよ?

 前世合わせると三十七歳ってこと気にしてないよ?よ?


 にしても、おかしいわ。

 ただ見てるだけでいいなんて。

 そもそも、突然チーム組もうに対して反応がよすぎるわ。


 まるで前々から知ってたみたい。

 先に話つけててくれたのかしら?

 だとしても秘密にする理由ないし、シクロが話を受けるメリットもない。


 分からないわ。


「彼方より授かりし宿命の煌めき、顕現せよ!!《光導球(ライト)》」


 ちなみに魔法を使う際に詠唱が必要なわけではない。

 シクロが勝手に言ってるだけです。魔法使いの名誉のために一応。


 シクロが使った魔法は、白い光る玉を生み出す魔法みたい。

 暗かった洞窟もこれなら安全そうね。


「便利ね魔法って。これがあれば夜や暗いところでも色々できるわね」

「お前も魔法使いなんだがな」

「魔法使えないのよ。なにか?」

「魔法使いは適正がないとなれないはずだが?ん、敵が来たな」


 え?敵?

 私には全然見えないけどーーあ、来た。


 シクロは右腰に刺した剣を左で抜き、持ち替えて右手で構える。


「応援しろ」


 軽く首だけ振り向いたシクロが短く私に言う。

 どんだけ、応援されたいのこの人?


 もしかして、寂しがりやとか?

 だから私とチーム組みたいの?


 一応心の中で応援した。

 もしかしたらチーム組んでくれるかもしれないし。


 が、頑張れ〜。



「ふむ」



 敵は蜘蛛に似た怪魔だ。サイズは熊くらい。

 前足(?)で敵の怪魔が攻撃してくる。


 速い。野球の球くらい速いんじゃない?

 ひらりと優雅にーー無駄にとも言えるーー躱わして、シクロは蜘蛛型怪魔の足を切る。




 やばい、血が!

 シクロの着てる服は全身白。

 血がついたらすごい目立つことになるわ!


 洞窟は狭いし、横に交わしても血はつくことになるわよ。


 シクロのとった行動に私は目を見開いた。


 凄い、凄いわよ!よ!


 シクロは右手に持った剣で全ての血しぶきを弾いて見せた。

 神業。というか人間なの?あれは?




「フン」


 足を切られて苦しむ怪魔の頭をスパンとシクロが切る。


 戦士のイェロやドレアと比べてもレベルが違いすぎる。


 この人とチーム組めたら、安パイだわ!


 どうやってチームを組ませる?

 私のピーアールポイント。

 うーん、ハンター的観点からして私は無能。


 なら、女としての魅力で悩殺してしまえばいいのよ!


 フッ我ながらなんて素晴らしいアイディアなのかしら。


 うふーん。

 とりあえずセクシーポーズをとってみた。


「なんだ貴様、そのババくさいポーズは」

「ババババ、誰がおおおおばさんですって!?」

「いやポーズの話だが……」


 しまった!

 過剰に反応しすぎて余計におばさん感がでたわ!


 大丈夫よ精神年齢はともかく体の年齢は二十歳だし。


「フンこの我のポーズに憧れたというのなら指導してやらんこともないぞ」

「あ、大丈夫です〜」

「そ、そうか」


 しょんぼりしてる。

 なんか悪いわね。

 励ましてあげましょ!今のは大人気なかったわ。


「あ、さっきの剣技凄かったわね!血しぶき全部弾くなんて!びっくりしたわ〜」

「? 見えたのか。目もいいんだな」

「えっと?どういう」

「常人なら突然足が切られて、いつのまにか頭も斬りおわったくらいにしか見えん」


 そうなんだ。

 あんまり比較したことないからわからなかったけど。


 ん?待って、するともしかして……。


「私、魔法じゃなくて戦士の才能があるのかしら?ふふ、やはり私は天才ね!」


「目がいいだけだ、図にのるなよ。試しにこの剣を貸してやるから試してに怪魔と戦ってみるか?」


「すいません!調子乗りました!やっぱ私の才能は魔法よね!魔法サイコー」


「まぁ、もはやこの洞窟に怪魔はいないのだがな」

「そんなこともわかるんだ!流石魔法!」


「死体は回収屋に頼んである。組合に戻るぞ」

「組合?討伐なら報告は必要ないわよね?回収もしてもらうなら素材を買い取ってもらう必要もないし」


 ちなみに回収屋はハンターが倒した怪魔の死体なんかを回収するハンター組合の職員さんだ。

 そのまんまんの名前よね。センスなぁぁぁし!


「鈍いな」


 意味がわからずぽけーっとしてると、苛立ったようにシクロが続けていった。


「チーム結成の手続きが必要だろう?」

「組んでくれるの!?」


 わけがわからない。

 もしかして、本当に寂しがりやなのかしら。

 だとしても私より男の人の方が友達にはいいんじゃ。


 ハッ分かったわ。気づいてしまったわ。


「私の体が目当てなのね!ち、チームを組んでやるその代わりに!みたいな!」

「ち、違う!!」


 力強い否定。

 ほんのり顔が赤い。

 これは間違いなく、未経験ね。


「理由は、貴様の才能だ。貴様自覚は無いようだがすでに魔法を使えているぞ」


「はへ?」

「鈍い。応援だ」


 いまだに理解できないのは私の頭が弱いからでは無いはず。

 だって私の頭脳は天才だから!


「貴様は応援してる時に補助魔法を使っている」

「使ってないわよ?」

「無意識のようだが確かに我は感じた」

「気のせいじゃ無いかしら?仲間からもそんな話は」

「その仲間からも体がよく動くようになると聞いているぞ」

「うそ!私は聞いてないわよ!!ん?」


 というかなんでーー


「なんでそんなこと仲間から聞いてるの?関わり合いなかったわよね?」

「……少し話したことがあるだけだ」

「そう」


 そぉなんだ。

 にしても私魔法を無意識で使えてたなんて、ひょっとして天才!


 てか役立たずじゃないじゃないの!

 イェロのやつ今度あったら剣の鞘に落書きしてやる!


「ところでチームを組む前に一つ言いたいことがあるわ。実は私、『魔法の書』盗まれてるのよ」


「そうか」


 そうかってそれだけ〜。

 魔法の書を盗まれたなんて仲間にも打ち明けられなかった秘密なのに。


 魔法を覚えるための必須アイテム『魔法の書』


「魔法の書は所有者本人にしか効果がないはずだ。組合でもらってすぐ所有権を持つために血を表紙につけるはずだが」


「私、血を出すのが嫌で後でやりますって言って、盗まれたのよ。あはははは」


「笑い事ではないが?組合で適正ありと見られれば魔法の発展のため格安で一冊だけは魔法の書を売ってもらえる。本来の値段がいくらか知ってるか?」


「知ってるけど知らないわ」


「はぁ。よかろう魔法の書は我が買ってやる」


「ほ、ほんとに!?ありがと!あ、あと私が魔法の書なくしたことわみんなに秘密ね」

「なぜ?」

「んー、ほらみんな優しいから変に責任感じたり魔法の書新たに買おうとしたりしそうだし。お人好しすぎなのよね〜」


「フッ」

「あれ?今シクロ笑ったわよね?私?私のこと笑ったのかしら?」


「鈍いな」

「?なんかいった?」

「いや、なんでも」



 私たちは組合へと帰った。

 行きに感じた気まずさは無くなっていた。


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