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第1話「追放されました。私は悪くないもん」

 お店で昼食を食べ終えると、どうにも空気が重くなった。


 私たちのハンターチームでリーダーを務めるイェロがじっとこっちを見てくる。


 もしかして惚れたのかしら?あらあらまぁまぁ。



「お前はクビだ」

「え?お前は(クリ)だ?」

 イェロがなんと言ったのか私は聞き取れなかった。


「違う、チャチャ。お前は……()()だ!」

「お前ワニだ?」


 なんか力強く強調した言ってくれたみたいだ。

 でも聞こえなかった。本当だよ?

 聞こえなかったらほら?仕方ないよね?ね!



「チャチャ!!!」

「え?な、なに?」


 イェロの顔はマジだ。すごい圧を感じるもん。


 怖い!!


 難聴戦法では切り抜けられない。


 私は何度もチーム追放の危機にさらされてきた。

 それをあの手この手でなんとか阻止してきたじゃない。


 今日だって、乗り切ってみせる!!

 超えられない壁なんてないんだから!



「クビだ。いいな?」

「ま、待ってく!!理由を!理由を教えてよ」



 クビになる正当な理由なんてのは全く一ミリもこれっぽっちもない。


 不当解雇だ!!



「はぁぁぁぁ。まず一つ、お前が弱いことだ。戦力的に役に立たない」

 確かに俺は弱い。

 魔法使いなのに未だ魔法の一つも使えない。



「二つ、お前は修行もしない。魔法も剣術もやる気がなさすぎる」

 ぐ、いや、それはそのぉ〜。

 私の嫌いな言葉ランキング一位は努力なの!仕方ないの!


 口に出したら殴られるので黙っておく。



「三つ、その他の面でも役に立たないどころか足手まとい。荷物持ちくらいならと思ったらヘコタレル。かゆい寒い暑いと文句ばかり。ダンジョンでは変なものに触るし。『百害あって一利なし』ってやつだろ」

「確かにそうかもしれない。でも私たち幼馴染じゃない!大切な!同じ村で育った!!」


 もしチームを追放されたら誰が私を養ってくれるの!!

 こんな役立たずを!!



「だからこそ、何度もチャンスをやったろ?『次はちゃんとします、これからは頑張ります』というお前の言葉を信じて何度裏切られてきたか!!」


 くっ、イェロの説得はきつそうね。


 このチームは四人。

 重要なことは多数決が原則。

 リーダーの一存では私の脱退は決まらない。


 私と後一人が反対すれば保留になる。

 今までもリーダーのイェロ以外はなんだかん私に甘かった。


「ね、ねぇドレアは私のこと見捨てたりしないよね?ね!」


 赤い髪の少女にウルウルとした目を向ける。

 その名も必殺のウル目上目懇願。

 ドレアは甘いからこれでいける!!


「ご、ごめんね〜。私も流石にちょっと」


 だ、ダメなの!?

 あんなにも温厚で優しいドレアですら!

 虫すら殺さないドレアですら!?


 しかも若干引いた目をしてる。

 なにこれご褒美?いけるわね!


 もしかして、この前『ドレアはちょろい』『土下座したらヤらせてくれそうよね』って言ったのバレたの!?


 ガールズジョークでしょ!

 あなたの身が固いのは知ってるわよ。

 美人なのに彼氏いない歴=年齢だものね。


 私は最後の希望を見る。

 三人目のメンバー、この人を味方につけられなければ……。


 でも彼ならきっと。

 三人目のメンバーはチーム最年長の四十歳。冷静かつ保護者的観点から私を守るはず!!


 ちなみにリーダーのイェロは二十歳。

 赤い髪の女ことドレアは十九歳。

 私は二十歳、前世も合わせると三十七歳。


「フカグリさん!!」

「うーん、チャチャが悪い」


 シンプルな言葉ほど響くよね。悪い面でも。

 ジジィ、タンスの角に小指ぶつけろ!!


 一対三。

 多数決は負ける。


 私はこのチームを抜けることになる。


 このチームを抜けたくない理由がある。譲れない理由が。



 ずばり、


 こんな楽できるチームはない!!!


 戦わなくていい!


 荷物持たなくてもいい!


 甘えていい!!見張り中寝てもいい!!


 取り分は普通にもらえる!!



 ーー甘い!ちょー甘い!



 メンバー全員が同村出身だけあって最高なんだよ!


 私は楽して生きたい。

 労働なんてクソよ!


 だから、ぜったいに抜けたくない!

 実力行使だ!



「ふぅー。ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!」

「チャチャやめろ!みっともない!!周りにも聞こえるだろ」


 ガキのように泣きわめき、転げ回る。

 イェロは慌てて止めにかかる。

 恥さらしでもいい。


 私にあるのはただ一つの純粋な思い。

 今までの行動は間違っていた。

 でもこの想いは間違いじゃないと断言できる。


 ーーこいつらの脛をかじっていたい。


「チャチャ。一応チャチャとチーム組んでくれる人を探すのは手伝うから、ね?だから落ち着いてね?」

「ド、ドレアァ〜」


 っぱ。ドレアなんだよなぁ〜。

 優しい。惚れたわ。


 ドレアは周りの目を気にして私をなだめてるんじゃない。

 私のことを心配してる。そこがイェロとは違うのよねぇ。



 結論、




 ドレアさん好き!!!




「はぁ、じゃあチーム脱退の手続きとこいつのチーム探しに行くぞ」

「「了解」」


 りょ……と口に出かかる。

 癖ってやつ。


 チームのお決まりだからね。つい。

 リーダーのイェロが方針を決める。返事は了解。


 私はもうこのチームじゃないんだ。

 そう思うと寂しさを感じる。


 もう少し努力しとけば、もう少し。

 具体的にはギリギリ抜けてなくていいくらいの絶妙な努力。


 チームを抜けたら私みたいなクズとなんて関わってくれないわよね、みんな。


 私のチーム探しが最後かもしれない。

 みんなと話せるのは。


 ふーんだ!


 私を見捨てるようなクズと話さなくて済むなんて清々するな!!

 あばよクズども!今日でお別れよ!


 むしろこっちがお前らを見捨てたから!

 あ、ドレアは別ね!

 イェロとフカグリ爺さんよ!


 あとから泣きついても知らないんだから!!

 もう遅い(笑)だから!!



 何やかんやで私たちはハンター組合へ向かった。




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