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第十一話 剣持のキャンパスライフ


 大学入学から二週間が過ぎた。

 オレは午前の講義を終えて、大学内の食堂で小休止していた。

 ちなみに一週間前にB級のプロテストに受かったので、

 デビュー戦を考えたら、あまり飯を食うわけにもいかんな。


 とはいえ常に60キロ前後をキープしている状態だ。

 だから昼食と夕食ぐらいは食っても問題ないだろう。

 などと思ってると、少しチャラい感じの男子生徒がこっちに寄って来た。


「おお、剣持。 一緒に飯を食おうぜ! 瓜生うりゅうもいいだろ?」


「ボクは構わないよ。 剣持くんはいいの?」


「ああ、構わないぜ」


 と、オレは瓜生と呼ばれた黒髪のサラサラヘアの眼鏡男子にそう返した。

 ちなみにチャラい感じの茶髪の男子生徒の名前は藤城ふじしろだ。

 二人ともオレと同じ一年生で同じ学科なので、

 講義も一緒になることが多く気がつけば、友人関係になっていた。


 ん?

 よくお前に友達が出来たな、だって?

 ふっ、オレももう大学生だぜ。


 高校生の時みたいなオレ様キャラは止めたのさ。

 だから普通にしていたら、友達の一人や二人できるもんさ。



「なあ、剣持は何食うの?」


「そうだな、親子丼でも食うかな」


「んじゃオレはカツ丼で! 瓜生は何にすんの?」


「ボクは弁当を持ってきてるから」


「お、いいね。 もしかして彼女が作ってくれたのか?」と、藤城。


「残念ながら違うよ、自分で作ったよ」


「へえ、瓜生って料理できる系の男子なんだぁ~」


「まあボクはあまり余裕がない生活だからね。 食事も大半が自炊だよ」


「へえ、苦学生って感じだねえ。 

 ところでさ、二人ともサークル何入るか決めた?」


「「いや」」と、オレと瓜生は声を揃えて答えた。


「ってハモってるし! というかそろそろ決めないとヤバくね?」


 と、藤城はややオーバーアクション気味に両手を広げた。

 まあ確かに大学生なんだから、サークルは入っておきたいが、

 オレにはボクシングがあるからなあ。 

 

 運動系のサークルは怪我でもしたら問題になるから、

 文化系のサークルにしたいところだが、

 文化系のサークルがどんな感じかまるで分からん状態だ。


「藤城くんは何処に入るつもりなの?」と、瓜生。


「やっぱりテニスサークル! と言いたいところなんだけど、

 一人じゃちょっと……心細いかなぁ~、みたいな感じ?」


 藤城はそう言ってこちらをチラチラと見てきた。

 こいつ、すんげえ分かりやすい奴だな。

 少しウザいが、こいつのこういうところ嫌いじゃない。


「ボクはバイトで忙しいからな。 

 それに運動は苦手だし、運動系はパスしたいかな」


 そうだな、ここは瓜生に同調しておくか。

 なんか偏見かも知らんが、テニスサークルって人間関係が難しそうだ。


「オレも運動系はパス。 文化系ならいいぞ」


「ええ~、いいじゃん。 三人で見学へ行こうぜ。

 おまえらも女友達とか彼女欲しいだろ1?」


「いやボクは間に合ってるから!」


「え? 瓜生って彼女居るの?」


「まあ居るけど、それがどうかしたの?」


「へ、へえ。 じゃあ剣持は?」


「彼女は居ないな。 好きな人はいるけどな」


「そ、そっか~、じゃあオレも文化系でもいいかな~」


 こいつ、身替わり早いな。

 ある意味この柔軟性は少し羨ましい。


「文化系ならいいかな、

 で藤城くんは文化系のサークルの当てはあるの?」


「い、いや全然ないけど……ボードゲームサークルとかいいんじゃねえの?」


 ボードゲームか。

 確かにそれなら気楽にやれそうだな。 ん?



「おっ、そこの君たち! 一年生かい!?」


「え? は、はい? そうですが……?」


 急に近くの女子が話しかけてきたので、

 オレ達は自然と声の聞こえた方に視線を向けた。

 すると身長160前後、髪は黒髪のゆるふわ巻き。

 上はピンクのブラウスに下はやや丈の長い

 白いフリルのスカートという格好の女子生徒がこちらを見ていた。


 顔は美人というより可愛い系。

 あと胸元がけっこう膨らんでいる。


「わたしは3年生の経済学部の経済学科の神原かみばらあかり!

 こう見えてボートゲーム同好会の一員だよ。

 キミ達、ボートゲームに興味あるのかな?」


「え? い、いや? あ、でも興味はあるかな? なあ、瓜生、剣持」


「いやボクに振られても困るよ」と、瓜生。


「オレは……少し興味あるかな」


「よしよし、なら早速今日にでも見学に来るかい?

 よく言うでしょ? 善は急げ、と!」


 なんか微妙に諺の意味違わね?

 でもなんというかこの人の乗り嫌いじゃないな。

 なんだかんだで可愛いからな。 なんか色々と許せる。


「あ、南条く~ん、こっちこっち!

 今年の新入部員をようやく確保したよぉ~」


 い、いや神原かみばらさん。

 オレ等まだ入会するとは一言も言ってないが……


「神原さん、なんか無理矢理誘ってない?

 ダメだよ、いたいけな一年生を無理に誘っては……ん?」


「え? あ、あれ? な、南条……さん?」


 オレは思わず呆けた表情でそう言った。

 そう、神原さんに南条くんと呼ばれた男子生徒だが、

 オレはその顔に見覚えがあった。

 そう、我が聖拳ジムの先輩である南条勇さんだったのだ。


「……剣持だよな?」


「は、はい。 南条さんも同じ大学だったんスね」


「なになに~、二人とも知り合いなの~?」


 と、神原かみばらさんが空気も読まず単刀直入に聞いてきた。

 やべえな、こりゃスルーするわけにはいかねえな。

 大学ではプロボクサーという事は隠したかったんだが……。


「うん、オレのジムの期待の新人ルーキーだよ」


「ん? ということはこのコもプロボクサーなの?」


「「ぷ、プロボクサー!?」


 神原さんの言葉に藤城と瓜生が声を揃えて叫んだ。

 あ、ああ~。 藤城達だけでなく、周囲の人達もこちらを見てるよ。

 か、神原さんは天然系か?

 しかしこれは少し困ったな、大学では極力知られたくなかったんだよ。


「け、剣持、マジなの?」と、藤城。


「ああ……まあ別に隠してたわけじゃねえけど、

 まだテストに受かったばかりの新人だからな。

 だからあえて言う必要はねえと思ってた」


「へ、へえ……剣持くんってボクサーだったんだ。 ……凄いね」と、瓜生。


「ん? もしかして、わたし余計なこと言ったかな?」


 うん、まあ言ったね。

 まあでも悪意はないから、許すけどな。


「しかし剣持がウチの大学だったとはねえ」と、南条さん。


「ええ、オレも驚いてます。 ところで南条さんも

 ボートゲーム同好会の一員なんですか?」


「うん、そうだよ。 運動系は万が一怪我したら困るからね。

 だから文化系のお気楽なサークルに入った、みたいな感じだよ」


 そうか、南条さんも居るのか。

 なら比較的入りやすい環境だな。

 なんか凄く緩くて楽そうなサークルっぽいし。


「……オレは入会してもいいですよ」


「ホント!? なら午後の講義が終わったら見学に来てよ!

 部室の場所は……そうね、ラインで教えるよ。 だからID交換しよ!」


「は、はい。 いいですよ」


「な、なら俺も見学に行きます」と、藤城。


「……ボクも行きます」と、瓜生も同調する。


「はい、はい、んじゃ皆のスマホ出してね!」


 そう言って神原さんはオレ達三人と素早くIDを交換した。

 なんだろう、この先輩良い人っぽいけど、

 男子を勘違いさせるタイプだな。 うん、間違いない。


「まあ剣持、それに藤城くんに瓜生くん。

 ウチのサークルは基本的に自由参加だから、

 バイトとかで忙しいなら、その時は無理に参加しなくていいよ」


「は、はい。 南条……先輩よろしくお願いします」と、藤城。


「ボクはバイトで少し忙しいので、たまに顔を出す程度になると思います」


「うん、それで全然いいよ」


「はい、それではよろしくお願いします」


「オレも基本的に練習を優先するので、たまに参加する形と思います」


「オーケー、オーケ、というか俺も基本的にそうだからね。

 んじゃみんな、午後の講義終わったら指定した場所に来てね」


「「「はい!」」」



 こうしてオレ達はとんとん拍子でボートゲーム同好会に入会した。

 午後の講義が終わって、指定された部屋に行くと何人かの先輩が居たが、

 基本的に皆、親切で良い人ばかりだった。


 オレだけでなく藤城と瓜生も乗り気になったようだ。

 まあ二人にプロボクサーと知られたのは、少し予想外だったが

 二人はそれで距離を置くような真似はしなかったので、結果オーライだ。


 まあボクシングだけじゃ味気ないからな。

 オレも少しはキャンパスライフってのを味わいたいからな。

 でもこうして人と触れあうのも悪くねえな。


 オレはそう思いながら、先輩達に助言を貰いながら

 皆でわいわいと人生ゲームを楽しんだ。 

 うん、人生ゲームもけっこう楽しいな。



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― 新着の感想 ―
[一言] 11話にして、初の女性新キャラ。 脈は...なさそう。これは部活の勧誘で思わせぶりな態度を取るだけですな。 瓜生の野郎、笹本タイプと思ったらぜんぜん違うじゃないか。 何が、女に困ってない…
[良い点] 南条先輩と同じ大学だったとは! これもある意味、剣持にとって天命ですね。 先輩と仲良く、楽しそうなサークルになりそうですね!
[良い点] 剣持くん、まるくなりましたね。 大学で新しい登場人物が出てきました。 どういう風にからんでいくのかな? 楽しみです。 剣持くん、大学生ライフを楽しんでますね。(^^)
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