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第四十八話 そして京都へ

累計3000PV達成!

これも全て読者の皆様のおかげです!


「……たろう、け……んたろう!」


 ん? 誰かが俺を呼んでいる。

 もしかして俺は流行りの異世界転生をしたのだろうか?

 ならば中世ファンタジーの世界がいいぞ。 そこは譲れない。

 それとエルフだ、エルフ、ロリ可愛いエルフを連れて来い!

 などと思っていたら、強引に現実に戻された。

 

「ちょっと……健太郎!!」


「う、うわっ!?」


「ちょっと……「うわっ」て何よっ!?」


「いやいや近い近い。 マジで顔近いから!」


 目を覚ましたら金髪美少女の顔がドアップだぜ?

 そりゃ普通に焦るよ。 嬉しいより、驚いたという感情の方が強い。

 つうか里香はなんでナチュラルにそういう真似するの?

 そういうのが男子を勘違いさせるんだぜ? いやマジでさ。


 なんかボクシングでいうと、意識外のところから殴られた感じ。

 いや本当にどきっと、というよりびくっとするんですよ?

 少なくとも不意打ちでこういう真似はやめて欲しい……な。


「だって起こしても、アンタが起きないもん。 

 それより健太郎、窓から富士山が見えるわよ?」


「ん? ああ……ホントだ」


 確かに窓の景色から富士山が見える。

 流石日本一の富士山。 見ると癒されるわ。

 まあわざわざ登ろうとかは思わんけどね。

 というかなんで里香が起こしたの?

 俺は苗場さんに頼んでた筈だが……。

 という具合に視線を苗場さんに向ける。

 すると俺の意図を察したかのように、里香がこう口を挟んだ。


「いや私が代わりにやることにしたの! というか健太郎!

 なんでもなんでも早苗に頼るのやめなよ?

 ……そ、それに私もそれぐらい出来るし!!」


 と、里香はぷいっと顔をそむけた。

 ん? もしかして嫉妬ジェラシー

 に加えて「私が起こしたかった」ということ?

 なんだ、里香も可愛いところあるじゃねえか。

 などと口に出すと藪蛇だ。 さすがにそれくらい分かるぜ。


「そうか、そうだな。 なんかごめんね、苗場さん」


「う、ううん、わ、私は気にしてないよ」


「それと里香、起こしてくれてありがとな。

 やっぱり新幹線に乗ったら、富士山は見ときたいからな」


「ふ、ふん。 これでもわ、私もけっこう役に立つのよ?」


 と、謎アピールをする里香さん。

 もしかして最近俺が苗場さんに色々お願いしてたのを

 微妙に気にしてた? ならば

 ここはさりげなく褒めておこう。


「いやいや、俺は里香が傍に居るだけで満足だよ」


「え、え? ちょっ……そ、それどういう意味?」


「まあそれより一緒に富士山見ようぜ!」


「う、うん」


 すると里香は俺の背中に身を寄せてきた。

 俺の肩から背中にかけて、里香の腕が添えられる。

 一瞬どきっとするが、なんとか耐えた。

 ここで里香の腕を振り払うと、多分好感度が下がる。

 でも必要以上に身体をくっつけても、それも多分好感度が下がりそう。


 なんなんすか、この理不尽な選択肢は?

 流石、現実リアル。 とんでもないクソゲーだぜ……。


「へえ~。 富士山、綺麗~。 なんか癒されるわ~。 よいしょ!」


 満足したのか、里香は俺の背中ら離れて自席に戻った。

 俺もとりあえず自席に座る。

 すると里香がこちらを見て、微笑を浮かべた。

 どうやら機嫌を直してくれたようだ。


 しかし途中セーブ機能のないこの現実クソゲー、マジでクソゲー。

 でも我々(おれたち)はこの現実クソゲーの呪縛からは逃げられない。

 ……なんつってな。



 東京駅から新幹線で約二時間。

 目的地である京都駅に到着。

 俺達は先生方せんせいがたに誘導されながら、バス乗り場へと向かう。


 なんか少し寒いな。

 そういや京都って夏はかなり暑くて、冬もかなり寒いんだっけ?

 なんかSNSのネットの友人がそんなこと言ってた気がする。

 俺の気のせいではなく、

 周囲の女子も「なんか寒くない?」と言っていた。



 本日の予定はこのままバスで清水寺へ行くらしい。

 まあ修学旅行先が京都なら、清水寺は鉄板だろう。

 とりあえず清水寺へ行っとけ、みたいな感じ?


「はいはいはい、みんな早くバスに乗ってね!」


 担任の飛鳥先生にそう言われて、俺達もバスに乗り込んだ。

 とりあえず俺は後ろの方の席に座る。 すると俺の隣に来栖が座った。

 里香は苗場さんとペア。 そんな感じの席順になった。

 若くてけっこう綺麗なバスガイドさんが――


「どうも皆さん、私が本日のバスガイドを務めてさていただきます。

 伊織美里いおり みさとです。 皆さん、おいでやす~」


 お、おいでやすって本当に言うんだ。

 まあでもSNSの京都在住のネットの友人に言わせれば、

 基本的に普通の京都人は「おいでやす、なんか言わんよ」

 とか言ってたな。 まあ基本的にはそうだろうな。

 でもこうして言われてみると、なんか京都へ来たって感じがするぜ。


 周囲の男子も「あの人、綺麗じゃね?」とか、

 女子も「わたし、おいでやすってはじめて言われた」とはしゃいでいる。

 その後、バスガイドさんとうちのクラスの連中は楽しく会話を交わす。

 一方、俺はとくにやることもなく、眠ったふりをする。



 まあ盛り上がっているところに、俺が何か余計なことを言って

 場の空気をぶっ壊す可能性があるからな。 

 だから今はあえて黙って寝たふりする。



 そしてしばらくすると目的地に到着。

 なんだ、思ったより近いんだな。

 バスが止まったのは、だだっ広い駐車場だ。

 他にもたくさんバスが止まっている。

 そして俺達は先生の指示に従い、バスから降りた。



 ここから有名な三年坂さんねんざかを上って、清水寺へ向かう。

 三年坂と言えば、アレだ、アレ。

 なんでも「坂を登っている途中で転ぶと三年以内に死ぬ」といった

 伝承がある。 また万が一、三年以内に死ななかった場合も

 既に寿命が縮まっているとか。



 まあ少々眉唾な話だが、こういう伝承はけっこう馬鹿にできないからな。

 だからあえて転ぶような真似はせんよ。

 俺はこう見えて長生きしたいからな。



 そんな感じで三年坂を登っていく。

 少々長い坂だが、部活で鍛えている俺は楽勝だ。

 来栖も里香も平然としている。 二人は運動神経良いからな。



 だが苗場さんは少し息を切らしており、

 田村さんと笹本はけっこうしんどそうだ。

 まあ田村さんは女子だからいいけど、笹本。

 お前は男だろ? お米食え、お米!



 などと思っているうちに清水寺に到着。

 うお、流石は清水寺。 けっこう観光客いるじゃねえか。

 流石は京都でも屈指の人気スポット。

 そしてその後、仁王門におうもん前の階段で集合写真を撮る。

 各クラスごとの集合写真も撮り終わり、

 ここからはクラス単位での移動となった。



 石段を上り、門をくぐる。

 おお、アレが噂の五重塔か。 こう見えるとなかなか凄いな。

 そして轟門の近くの拝観受付でしばらく待たされた。

 まあこれだけの数の客をさばくのも大変だろうな。


 特にやることがねえので、とりあえず班で写真を撮ってみた。

 里香はノリノリで来栖と苗場さんは普段通り。

 そして田村さんと笹本はなんか表情が固い。

 そしてようやく順番が回ってきて、団体入り口から本堂へ入った。


 しばらく進んで、有名な清水の舞台に到着。

 清水寺といえばやはりここが一番有名だろう。

 周囲を見るとうちの生徒だけでなく、

 一般観光客も記念撮影している。


「うわっ……かなり高いわね」


「うん、こうして見るとなんか感慨深いわね」


 里香と苗場さんが舞台の欄干らんかんから真下を覗き込み、そう言葉を交わす。

 俺も釣られて覗き込んでみる。 うお、高けえ! マジで高い!


「なんでもこの欄干から覗き込むと、12メートル以上あるらしいよ」


「へえ、早苗詳しいね」


「うん、なんか来る前に色々と調べてみた」


 へえ、12メートルか。 高層ビルに換算すると4階くらいか?

 よく「清水の舞台から飛び降りおる」という表現を聞くが、

 こりゃ無理でしょ? 12メートルだよ? 4階だよ?


「健太郎、なに考えてるの? もしかして飛び降りる気?」


「違げえよ、というか里香。 俺に死ねと言ってるのか?」


「いやだって健太郎ならなんかやりそうじゃん。 ねえ?」


「あ、あははは。 どうだろう?」


 里香の問いに曖昧に笑う苗場さん。

 いややらねえし、そこまで馬鹿じゃねえよ。 ……多分。

 その後、とりあえず記念撮影する。

 まずは班で、そして後はそれぞれ個人で撮る。

 デジカメとスマホで二回ずつ撮っていく。

 俺と来栖、田村さん、笹本は必要最低限に抑えたが、

 里香、そして里香に付き合わされる苗場さんはだいぶ時間かかった。


 とにかく色んなポーズと背景で写真を撮る二人。

 里香さん、自分大好きっスね。 でも女子高生はそれぐらいでいい。

 でも少し撮り過ぎっスよ? 

 少しは撮影する方の身にもなってくれよ。


 とりあえず写真撮影は終了。

 そして本堂から清水寺の境内にある地主じしゅ神社に向かう。

 地主神社は関西圏の縁結びのパワースポットとして人気がある。

 特に女性の人気が凄いらしい。



 地主神社で祭祀している御祭神が島根県の出雲大社に鎮座される

 大国主オオクニヌシだそうだ。

 大国主大神は、たくさんの女性と出会い、多くの子宝に恵まれたので、

 後世では縁結びの神様として名が通っている。



 まあそういうわけでこの地主神社は観光客だけでなく、

 恋愛成就を願う若い参拝客の間でも非常に人気のあるスポットだ。

 ということで当然の如く、我が校の生徒――特に女生徒が

 神社の周辺できゃーきゃー言いながら、

 お参りをして、おみくじを買っている。

 

 そして有名な「恋占いの石」にチャレンジする女生徒達。

 恋占いの石は離れた位置にある石の間を両目を瞑りながら

 歩いて見事に到達すれば、その恋は叶う! 

 みたいなある種の儀式だ。


 一度で辿りつければ恋の成就も早く、

 二度三度となると恋の成就も遅くなるらしい。

 また人にアドバイスを受けた時には、

 人の助けを借りて恋が成就するとの話。


 まあいかにも女子が好きそうな話だな。

 というか我らが女王様――神宮寺里香もさっそくチャレンジしている。


「うわ、眼を瞑って歩くの怖っ! 早苗~、今どんな感じ~?」


「里香ちゃん、他人のアドバイスを受けたら、

 他人の助けが居る恋になるみたいよ~」


「そ、それはちょい嫌だね。 えーい、気合で前へ進むわ!」


 しかしなかなか成功しなかった。

 結局、三度目更には苗場さんの助言があって

 ようやく成功させた里香。 その表情も少し微妙だった。


「三回目で成功かぁ~。 しかも他人のアドバイス付きで。

 ……こりゃ私の恋は前途多難だな。 まあ分かってたけど……」


「り、里香ちゃん、あくまで儀式だから!」


「まあいいや、それより皆おみくじ買ったよね?

 「せーの!」で一斉に開封しない?」


「おお、面白そうじゃん。 いいね、やろうぜ」


「うん、面白そうだね」と、来栖。


 そして俺、来栖、里香、苗場さん、そして田村さんと笹本は

 一斉におみくじを開けた。


「げっ! 凶」と喘ぐ里香。


「俺は吉だね」と、来栖。


「俺は小吉だな」


 まあ可もなく不可もなくってとこだな。


「うっ……私も凶だ」と、一瞬顔をしかめる苗場さん。


「……吉かあ」と、田村さん。


「えっ!? 大凶っ!?」


 と、露骨に驚く笹本。

 というか大凶とかマジで出るんだ。

 ある意味大吉よりレアかもなあ。


「まあ所詮おみくじだし、気にする必要ねえだろ?」


「まあ、そうだね」


 俺の言葉にそう相槌を打つ来栖。

 そして俺と来栖が自分の分を含め、

 残り四人のおみくじを一番高いところにくくりつけた。

 まあこの中では俺と来栖が背高いからな。

 そして地主神社から出て、拝観経路に従って歩いた。


 そのまましばらく進んでいくと、音羽おとわの滝に到着。

 この音羽の滝は、「清水の舞台」と並ぶ定番のスポットだ。

 学業、恋愛、長寿にご利益があるとの話。

 そういうわけで観光客には大人気だ。

 修学旅行で来た学生も必ずと言っていいほど、

 この滝に立ち寄り、中高生の人気も高い。


 でもけっこう混んでいるな。

 しゃあねえな、ゆっくり待つか。

 十分後。

 ようやく俺達の番が来た。


 さて、どの滝にするかな。

 長寿はまだいいだろう。 一応まだ若いからな。

 ならば学業か、恋愛かあ。

 ……どっちにしようかな。


「健太郎、なにぐずぐずしてるの!?

 混んでいるんだから、早くしなさいよ!」


「ちょ、ちょ……里香、背中を押すなよ?」


 里香に押される形で真ん中の滝の前に来た。

 ん? 真ん中の滝って何の効果だっけ?

 まあいいや、めんどうくせえ。 何でもいいや。


 俺は長い柄杓ひしゃくを伸ばして、滝の水を汲んだ。

 そして口元まで運び、二口ほど飲んだ。

 

「うお……美味い!」


「ホント……美味しい」と、里香。


「本当だね」と相打ちを打つ苗場さん。


 どうやら皆、ちゃんと滝の水を飲めたようだな。

 ところであの真ん中の滝は何のご利益があったんだ?

 里香も苗場さんも田村さんも真ん中の水飲んでたな。

 来栖と笹本は右側の滝から水を汲んでたな。

 まあいいや、学業、恋愛、長寿のうちの三つなら

 どれがきてもご利益はある。 ……多分な。



次回の更新は2020年7月22日(水)の予定です。



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― 新着の感想 ―
[一言] 京都の修学旅行の思い出、たくさんありますよ。 バスガイドさんに恋して木刀をあげた思い出だったり。 産寧坂、行きました。転びそうになったのでブリッジで耐えました。死んでないのでセーフ。ブリッ…
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