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第二十一話 委員長は委員長


累計PV1000突破!

これも全て読者の皆様のおかげです!




 あの天才・剣持拳至の死闘から一週間が経った。

 俺は剣持に勝った代償として、右拳を負傷。 

 結局三回戦不戦敗という結果に終わった。

 ちなみに我が帝政学院ボクシング部のインターハイ本戦の結果は――



 フライ級の二年生の香取はベスト8。

 バンタム級の二年生の新島にいじまは二回戦敗退。

 ライトウェルター級の三年生の郷田さんはベスト4。



 そしてウェルター級の主将キャプテン武田さんは見事優勝した。

 ちなみにバンタム級の新島は二回戦で顕聖学園の影浦蓮かげうら れんと当たり、

 1R1分23秒RSC負け。 



 その後、影浦は残りの試合を全勝全RSC勝ちという

 結果でバンタム級で見事に初優勝。

 そういう結果で俺達帝政ボクシング部の夏は終わった。

 だが秋には国体がある。 郷田さんや武田さん達三年生の最後の公式戦だ。



 故にインターハイ終了後も殆ど休まず毎日練習をしている状態だ。

 しかし俺は全治一カ月半の負傷。 だから国体には出場できそうにない。

 そういうわけで俺はしばらく忍監督から――


「とりあえず完全に拳を治せ。 治るまで夏期講習にでも出ていろ」


 と、言われたので素直にそれに従っている。

 まあこれに関して一部の二年生、

 というかバンタム級の新島丞太にいじま じょうたが軽く嫌味を言ってきた。

 まあそれを軽くスルーしたが、どうも俺は新島に嫌われているようだ。



 まあ俺は普通科、向こうは体育特選コースの特待生。

 なのに俺の方が早くレギュラーの座についた。

 向こうからしたら、その辺が面白くないんだろうが、

 そんな事知ったこっちゃない。 

 俺も実力でレギュラーを掴んだわけだしな。



 まあ俺と体育特選コースの同級生はこんな感じの関係だ。

 でも武田さんや郷田さんは色々フォローしてくれるから、

 俺はそんなに気にしてねえけどな。 ま、ちょっとは新島にムカつくが。

 まあとにかく今の俺はしばらく練習できない状態。



 というわけで昨日から学校の夏期講習に参加している。

 しかしなんかいまいち授業に身が入らない。

 夏休みに学校で勉強するって事が嫌という部分もあるが、

 なんか剣持戦で全力を出した感じで、

 軽い燃え尽き症候群なのかもしれない。


 おまけに右手を怪我しているから、

 左手で字を書いているからなんかだるい。

 キーンコーンカーンコーン。


「それでは午前の授業はこれで終わります」


 二年四組の担任の英語教師・飛鳥先生がそう言って、

 午前の授業が終わった。

 そして昼休みとなり、教室内には独特の喧騒に包まれた。

 とりあえず試合も終わったばかりだ。 

 減量とか気にせず腹一杯食おう。

 俺はそう思いながら、来栖と里香の席に視線を向けたが――


「雪風君」


 と、急に女子に声をかけられた。

 里香じゃない。 というか里香とは対照的な女子だ。

 身長は155センチくらい。 

 髪型はしっとりとした黒髪のツインテール。



 体型はすらりとしている。 でも紺色のベストの胸元はふくよかだ。

 スカート丈は普通。 というか多分これが標準的な長さなんだろう。

 なんというか全体的に真面目な雰囲気が漂っている。

 それになんというか清潔感のある女子だ。 後、少し潔癖症っぽい。

 確か彼女はこのクラスの委員長。 え~と、名前は……。



「雪風君、部活で休んでたでしょ? これプリントと私のノートのコピー。

 良かったら使ってね。 あ、でも神宮寺さんか、来栖君から借りるかな?」


 委員長は、細いフレームの眼鏡のレンズ越しに、こちらを見据えている。

 よく見るとこの子もかなり可愛いな。 

 なんか護りたいタイプというか、嗜虐心をくすぐるタイプ。

 なんか一部のマニアに受けそうな感じ。


「いや有り難く使わせてもらうよ、委員長」


「うん。 雪風君、右手を怪我しているけど大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫。 一か月くらいで治るよ、委員長」


「……そう。 それと私の名前は委員長じゃないわよ?」


「ん? でも委員長は委員長じゃん」


 俺がそう答えると、委員長はちょっとムスっとした表情で――


「苗場! 苗場早苗なえば さなえ。 それが私の名前よ?」


「分かっているよ、苗場委員長」


「……もしかしてわざとやってる?」


「ん? 何が?」


「……雪風君って天然?」


「ん? 苗場委員長、それどういう意味?」


「……私を委員長と呼ばないで! 

 というかなんでいちいち委員長ってつけるの?」


 ん? なんか苗場委員長が怒りだしたぞ? ……何で?

 だって委員長は委員長じゃん。 俺、間違っている?


「じゃあなんて呼べばいいのよ、苗場早苗委員長」


「……わざとね。 絶対わざとね!」


「いやだから何が?」


「もう知らない! 馬鹿っ!!」


 そう言って苗場委員長はぷりぷりと怒りながら、自分の席に戻った。

 なんで切れてるの? もしかして女の子の日か?

 まあいいや、なんで怒っているか知らないけど、飯を食おう。

 というわけで来栖と里香のところへ寄って行くと――


「健太郎、今のはないよ?」


「うん、今のは健太郎が悪い!」


 と、何故か来栖と里香にもしかられた。

 え? 何で? 女の子の日がNGか?

 でも口には出してないよ? 


「……俺、何か変な事言ったか?」


 すると来栖と里香が顔を見合わせた。


「……マジで分からんの?」


「……流石に冗談でしょ?」


「……いや悪い。 マジで分からん」


 すると来栖は両肩を竦めて、里香は小さく嘆息した。


「やっぱ健太郎は健太郎だね」


「うん、まだまだ心が山猫レベル。 というか山猫以下かも?」


 えええっ!? 何、この反応?

 でも流石に山猫以下は酷くね?


「というかマジで言ってるの?」


「苗場さん、可哀そう~」


「いくら天然でもあれはないわ~。 マジ引くわ~」



 と、周囲の女子が口々にそう呟いた。

 え? 何? この流れ? 

 もしかしてクラス全員で俺を虐めようという魂胆?


 ……ではないよな。 流石にそれくらい分かる。 ……多分。

 よし落ち着いてみよう。 とりあえず偶数を数えよう。

 ……2、4、6、8、10。



「……健太郎、マジで分かんないの?」


 うん、まあ分かんないんだけどさ~。

 この空気でそう答えるとヤバいのは、人間偏差値44でも分かる。

 考えよう、彼女が、委員長が怒った理由を。


「う~ん、う~ん」


「分かったよ。 健太郎、ヒントをあげるよ!」


「おお、マジか!? 流石来栖!」


「ヒント其の一。 健太郎がもし苗場さんに「雪風ボクシング部員」と

 呼ばれたら、どう思う?」


 な、なんだぁ~? そのヒントは!?

 雪風ボクシング部員って普通そんな呼び方する奴はいねえよ!

 というかなんか微妙にイラっとする。

 人の名前はちゃんと呼べ……っ!?

 

 その時、俺の中で天啓が開いた。

 要するにそれは他人も同じ。 そして委員長も例外ではない。


「……なんでもかんでも委員長とつけたから?」


 俺は恐る恐るそう答えた。

 すると来栖と里香が「ほっ」と安堵のため息をついた。

 

「一応理解できたぁ~」


「うんうん、健太郎もやればできるんだね!」


 と、なんか微妙に嬉しくない反応をされた。

 でもなあ。 いいんちょ……苗場さんって少し影薄いからなあ~。

 だからなんとなく委員長って呼び方で覚えていたよ。


「い、いや悪かったよ? 

 で、でもいい……苗場さんとはあんま喋った事ねえからさ」


「い、いや苗場さんは一年の時も同じクラスだったでしょ?」


 来栖が引き気味にそう言った。

 ああ~。 そういえば苗場さんは一年生の時も委員長だったな。


「……ふう、健太郎! そういうところだぞ?」


 と、呆れ気味に叱る里香。


「うっ……悪い」


「私に謝っても仕方ないでしょ? 苗場さんに謝りなさい!」


「お、おう! 今後はマジで気をつけるよ?」


「ホント、マジでそういうところ直しなさいよ!」


 委員長と呼んだだけで、この扱い。

 でも確かに人の名前はちゃんと呼ばないといけないよな。

 だけどあるでしょ? なんかいまいち名前が覚えにくい人ってさ。

 俺は興味ある事には記憶力が凄く働くけど、無関心なものには

 全然働かないからなあ~。 でも今後は気をつけるよ。 ……多分。



次回の更新は2020年5月10日(日)の予定です。



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