18話 王女帰還
前回。
魔物がよってこないようにしたのが仇となった。
……そろそろ離れてくれませんか?
「あれっ、もう夜か」
気づけば辺りは暗くなっていた。
ライルはまだ寝てるしあの手で抜け出すか。
レンは『収納』から抱き枕を出し、『交換転移』を使う。今回もうまくでき……て無かったようで上着だけ取られてしまった。
「新しいの出すか」
新しい上着を着てマヤがいたところまで行く。そこには手紙が置かれていた。
―
レン様、私は王国へと戻らせていただきます。レン様に言われた通り勇者の前でレン様の名前を言ってみて、反応したら話しかけてみます。短い間でしたがありがとうございます。また料理を食べさせてもらえたら嬉しいです。
―
戻ったのか。よく約束してたこと覚えてたな。てか最後、願望じゃんか。
手紙をしまい、急いで夕飯の準備に取りかかる。
ムニエルはまだ残ってるし、暖かいスープを作ってパンを出せばいいか。
手際よく作っているとライルが起きてくる。やはり不機嫌だ。
「何で抜け出せるんですか。でも今回は上着だけ手に入ったので許します」
上着が狙いだったのか。しかももう着てるし、幸せそうな顔してるからいいや。
ライルを座らせ皿にのせた料理を出す。食べ終わり、片付けているとライルがマヤがいないことに気付く。
「何でいないのですか?」
何でって、さっきまでよく気づかなかったとこっちが聞きたいくらいだ。
マヤについて話すと「お友達になれると思ったのに」と言って残念そうにしていた。
そんなことより先程からこちらの様子を見ている魔物がいるな。狐?なのか。
「そこにいるやつ出てこい」
呼ばれた狐?はビクッと体を震わせた後、様子を見ながら出てくる。
「あ!キリヒメちゃんじゃないですか!」
ライルは駆け出し狐?に抱きつく。どうやら知り合いの様だ。
「ちょっ、抱きつかないでよ!なんでそんなに元気なの!?」
ライルから転移で抜け出し、人化する。
金色の眼と髪をした少女だ。魔力を感じない?どういうことだ?
「あ、レンさん。いい忘れてましたけど神霊の九尾のキリヒメちゃんです」
「なんで勝手に話しちゃうの!?こほん、レンさんでしたか?はじめまして神霊のキリヒメです。魔物ではなく精霊です」
なんと精霊だったらしい。だから魔力を感じなかったのか。今感じているのは霊力か。
「レンだ。精霊ってどういうものなんだ?」
「精霊は、まぁ私に限らず好きな姿に変えることができるのです。私の場合、元々九尾と神霊だったこともあってさっきのような姿でいたほうが落ち着くのですよ。気づいたのですがあなたから霊力を感じます」
よく気づいたな。確かに持っているが。
「私の眼は霊力の動きを見ることが出来るのです。レンさんを見たときに莫大な霊力が垂れ流しになっているので気づきました」
垂れ流しに?あまり減ってないように見える。
「多分ですが回復量が多いんです。私よりも多いかもしれません」
そう言って金色の勾玉を出してくる。
「これはレンさんを探しているときに死んでしまった母です。神獣、神霊は寿命はありませんが私だけ先祖還りの神霊なんです。母は普通の狐の精霊でした」
そうなのか。でもなんで僕の方に渡そうとして来る?
「レンさんはライルの母の死体を収納に入れてますよね?」
なんでわかるんだ?