143話 消滅1
前回。
人化しちゃうほどの加護って、一体どれだけ強い加護あげたの!?
人化したカースドラゴン、少女は結界をゆっくりと広げていく。穴が大きくなっていくのを勇者達は必死に魔法を撃ちまくり阻止しようとする。攻撃はほとんど効かないと知らずに。
「無駄無駄~、効かないよ。早く魔法を止めないと煩かった勇者君が消えちゃうよ~」
それを聞いた王は結界の外にいた灰斗を見ると手と足の先から崩れ落ちていることに気がついた。慌てて魔法を止めるように言うが勇者達は死にたくない一心で魔法を撃っているために聞こえていない。
「まあ、神でも助けられないくらいに魂が消滅しかけてるから手遅れかも~。えい!」
気合いの入っていない声を出して結界にかけていた手を振り切った。
パリンッ
ガラスの割れる音がしたと同時に解呪が付与された結界は破壊された。
「そ、そんな……カースドラゴンは解呪の魔法に弱かったはずなのに……」
体をガタガタ震わせながら少女を怯えきった目で見た。
「だってカースドラゴンじゃなくなったんだから効かないよ~。それに今の種族はカースソウルドラゴン。魂呪竜っていうみたい」
「な!?その種族はすでにいない伝説の神獣じゃない!言い伝えによると魂呪竜が現れた場所の人は崩れ落ち、魂は消滅し、その地は廃墟と化すと。まさか進化したのか………」
「だからね~、封印に携わった国は潰してくことにしたんだ~。それにマヤちゃんに復活させてもらっただけでなく加護までくれたから恩返ししないと~」
その言葉に王は絶句した。父の話によるとカースドラゴンを封印する際に携わった国はこのアルト王国を初めとして約五ヶ国。それも王族が関わっているからだ。
このままでは地図から国が五ヶ国も消える。すべての回復、解呪を使える王族がいる聖国まで消されるとなるといよいよこのカースソウルドラゴンを止める者はいなくなる。
何としてでも止めなければならないが止めることは不可能だ。止められるとしたら神獣クラス以上でなくてはならない。そこで王はカースソウルドラゴンの纏う濃密な呪いによってなす術もなく倒れていく勇者を見たあとに叫んだ。
「私の娘を生け贄に差し出します!なので他の国と私の命だけは助けてくだ」「なに言ってるのよ!?」
しかし王女も自分の命は惜しい。必死に媚び始める。
「それってさぁ、マヤちゃんも含まれてるよね?」
ドスの効いた声で少女は言う。その直後纏っていた呪いが、レンでさえ引くほど濃く変化した。
「もうあんた達の顔を見たくないからさぁ、消えて?」
ゼロ距離まで一瞬で詰められ、ノーモーションでどす黒い竜の息吹を放った。