142話 加護持ちの呪竜2
前回。
自分の実力を過信しすぎるといつかは………
「あああああああ!」
灰斗は最後の力を振り絞り僅かにしか残っていない魔力と共に聖剣を降った。
パキンッ
聖剣が折れた音が響いた。それを受け止めきれない灰斗は膝から崩れ落ちる。呪いが侵食しきった地面に。
折れた聖剣は内部から腐食しているために今すぐ処置を施さなければ二度と使えなくなるだろう。いやもう手遅れなのかもしれない。その聖剣を見た灰斗の心は完全に折れた。
カースドラゴンはそんな灰斗を邪魔だと言わんばかりに尻尾を振り、吹き飛ばした。それも王達が固まっている場所にだ。
しかし飛んできた灰斗をキャッチする者はいなかった。解呪師まで近づきたくなくなるほど身体中が呪いに蝕まれている。しかも解呪師は結界師と一緒に呪いを通さないための結界を作っている。呪いを通さない結界が呪いに蝕まれた灰斗を阻み助けに行くことはできない。
そうしている内にカースドラゴンは呪いの範囲を広げ、すぐに城下町の端まで到達し結界のようにしたから覆っていく。
太陽の光が消えたことに疑問に思った王は空を見て絶望した。逃げ道がどこにもない。地下、空気、すべてを蝕むほどの呪いが誰一人として逃がさないと言っているかのように。
「さてと、煩くて邪魔な奴も居なくなったしやっと人化できた~!」
体が蝕まれていく勇者から目を離し、声がする方を向いた。レン達も驚いたがカースドラゴンがいた場所に一人の少女が腕を空に向けて伸ばしていた。
「あ、マヤちゃん、加護ありがとね!人化できるようにスキルまでくれて!」
飛んでいるレン達に向けて大きく手を振っている。だが呪いの中心にいるためか苦笑いしてしまう。
一人の勇者がその姿をみて無防備だと思ったのか少しだけ穴を開けてもらった結界から矢を放った。が少女になったカースドラゴンは振り向きもせずに飛んできた矢を掴み手首のスナップだけで投げ返した。それも勇者が放ったときとは桁違いのスピードで。
その矢は張られていた結界を容易く破り、矢を放った勇者を貫通した。それどころか結界が破られた場所から腐食していく。結界師はそれを阻止しようと魔力を注ぎ塞ごうとした。
「なに閉めようとしてるの?」
いつの間にか近づいてきていた少女の手によって塞がれようとしていた結界が止まった。
「逃がすわけないじゃん。この国ごと消してあげる」