137話 召喚の儀式(彩愛)
前回。
優秀な神器というか優秀なペットのほうがあってそう。
自分の部屋のフローリングに召喚のために書いた円がある。その真ん中には彩愛が立っている。
ようやく、ようやくこの時が来た。精霊達が取ってきてくれたこの神命の宝玉で『代償召喚』の代わりをしてくれる。もうこんな場所にいる必要もない。
彩愛は体全体に霊力を込めていく。この部屋は男性だと10人、女性だと15人が入れるくらいの広さがある。『代償召喚』のための円の大きさはそれと同じくらい。もちろん最初に書いた円よりは大きくなっている。
これ以上円が大きくなったら皆にバレる。せっかくダンジョンから手に入れられた結界・断の魔法が入った石を置いてるのに。あ、結界にぶつかった!お願い、止まって!
彩愛の額に汗が見え始める。表情も険しくなっていく。近くにいた精霊達も円にギリギリ入らない場所に三十体でまとまっている。彩愛に言われた円に入らないようにしながら、成功することを祈っている。
そうこうしているうちに霊力が底をつくギリギリで止まった。ということはそろそろ召喚されるらしい。
「これで、下準備は終わった。あとはでてきてくれるのを待つだけ……」
彩愛がフラフラとしながら精霊達のいる方へと歩いていく。霊力が尽きかけた状態で歩くが、足が縺れてしまいそのまま倒れ混んでしまいそうになる。
それを見た精霊達が慌てて動こうとするが誰かが助けてくれるとわかったのか安心した様子に変わった。彩愛には視界がスローモーションに見えていたため精霊達の様子に疑問を持つ。だがフローリングに体を強く打ち付けてしまうと思い咄嗟に目を瞑ったが一向に衝撃がこない。それどころか誰かの腕の感触を感じる。
「間に合った……君が彩愛であってるよね?」
目を開けてみるとそこには優しいオーラを纏った男の人が私をお姫様抱っこしていた。この王宮にはいない人だとわかった私は他にも気配を感じ、ゆっくりと視線を向けた。
そこにはいなくなったはずの澪、日葵、未来先生がいた。
「久しぶり、助けに来たよ!」
「澪……」
澪達は私のところへ来る。そして日葵が腕に触れ、霊力を流してくれた。驚いたことに十秒もしないうちに満タンになってしまった。
「これで立てるね。始めましてかな?僕はレンという神だ。それにしてもすごいね!周りにいる皆も神だから相当な霊力の量じゃないとこんな大人数は召喚できないよ」
そう言いながらレンと名乗った人は「ちょっと失礼」と言って私の胸の当たりに手を当てた。
私は混乱してしまったが、体の中に合った何かを消し去ってくれたようで他にはなにもしなかった。
「体の中に残っていた『代償召喚』の呪いのようなものは取り除いたけどそれと同時に『代償召喚』も消えちゃったけどいいよね」
そう言って私に微笑みを向けてくれた。