128話 荒れる勇者3
前回。
王様自体がダメではこの国もダメですねぇ。
くそっ、なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!毎日毎日悪夢と幻覚を見るとか鬱陶しい!
レンの魔法を魂に直接かけられたことによって毎日数時間に一度幻覚を、寝るたびに悪夢を見続けた。『侵幻魂』の効果は一ヶ月で消えたが、魂がそれを普通だと思い込んだ。それによって魔法の効果は消えても二度と幻覚や悪夢を見ない日は来なくなった。
解呪師、回復師の職業を持つ勇者でも魂に刷り込まれたような魔法は消すことができない。なぜなら魂に直接回復魔法をかけられるほどの実力者がいないからだ。
いや、一人だけいる。自分が回復の魔法を使えると思っていない精霊姫のみが勇者で唯一使える。しかし精霊達は王宮にいる精霊姫以外をを嫌っている。王宮に精霊姫がいるからこの国に残っているだけであって、いなくなれば国から姿を消す。
しかも精霊が見えるのはこの国で精霊姫だけだ。小さい子を好む精霊がこの国にいる子供まで嫌っている。それほど酷い国ということだ。
「何なんだよ!なんで加護まで消されなきゃいけない?俺が何かしたってのか?ふざけんな!俺はただあの魔王を殺そうとしただけじゃねぇか……」
レンのステータスを見れた勇者は精霊姫だけ。それを隠している本人は国自体を嫌っている。それだけでなく、この勇者本人を親を殺されたかのような目で見るくらい嫌っている。
天使に事情を話されたが納得できる分けねぇだろ!あの魔王が神獣王?神々の王になる器?だからなんだよ!俺が魔王だって言ったら魔王なんだよ!それになんだ。澪の前世の幼馴染で記憶を持ったまま転生して再会したって。んなことしるかよ!澪は俺の幼馴染だったんたぞ!俺と一緒にいるのが当たり前なんだ!
澪は灰斗を幼馴染と思っていない。灰斗が勝手に思っているだけであってそう思われているとも知らない。
天使も下位まで落とされて加護を持ってたとしてもほとんど上昇しないって言われたし、神の序列の一位にその魔王が就いたって?しかも澪達まで神の序列十位以内になったとか信じられるか!澪は絶対に自分から戻ってくる。俺のところに必ず戻ってくる!
この王宮に精霊姫の代償召喚で呼ばれるレン達に会うのはそう遠くない。西牙一人だけダンジョンに潜って会えないということも起きるのはそれと同時だ。
灰斗の勘違いしている心も折れるのはその時だ。