109話 お姫様抱っこ
前回。
逃がす気絶対になかった……だって結界まで張って転移すら出来ないようにするなんて……
レンはようやくお風呂から出してもらえ、くたくたになりながら大海神達のいる方へと歩いている。
澪達はレンが出ていった後に上がっていたので、もう少しすれば出てくるだろう。
大海神達が気づいたのか、こちらに向かって手を振っている。そして走ってきている神がいた。よく見ると暗滅神で、勢いをつけたままレンに突撃した。
すぐさまバックステップをし、勢いを殺して突撃してきた暗滅神を受け止める。
げっ、滅茶苦茶酔ってるじゃん。どれだけ飲んだらこうなるんだよ。神って酔うことにも耐性があるんじゃなかったっけ?
「大丈夫ですか?これ、水です。飲んだら落ち着きますよ」
暗滅神に水の入ったコップを渡す。
「……」
すぐに水を飲み動きが止まった。遠くでは大海神達が目をそらしながら酒を飲み続けている。もしかしてと思い暗滅神を覗き込むと――
顔を真っ赤にしながらプルプルと震えていた。そしていきなり立ち上がり、走って逃げようとしたが、先程とは違いフラッと倒れそうになってしまう。
隣へ移動し支えると「……ありがと」と小さな声で呟いた。レンから離れて歩きだそうとすると、また倒れそうになったのでレンは近づき足と背中に手をいれて持ち上げた。
「え!?ちょっ!?」
パニック状態になった暗滅神を無視しながら歩き出す。抵抗しようとしていた暗滅神は諦め、顔を真っ赤にしたまま大人しく首に手をまわした。
その行動をチラチラと見ていた大海神達は、暗滅神の反応に口をあんぐりと開けながら固まっていた。
「おいマジかよ。あの暗滅神が大人しくされるがままだぜ!?」
「大分昔に俺がやったときなんか、ガチで抵抗して殺されるかと思ったのに……」
「珍しいな」
三人とも暗滅神の反応に驚いているようだ。まさか抵抗を諦めると思っていなかったらしい。
ようやく椅子までたどり着いたレンは、暗滅神をゆっくりと下ろし、座らせる。
「はい、これをどうぞ。すこし改良したフルーツジュースです」
目の前に置くと、ゆっくりと手を伸ばしコップを掴んだ。匂いを嗅いだ後、コクコクと飲み始める。
匂いかがなくても毒なんて入ってないのに……
「……ぷは。……責任とって……ね」
飲み干した後の言葉が「責任とって」だということに大海神達は口を抑えながら笑っている。ちょっとイラッときたレンは、大海神達を時空魔法で神獣神霊が多くいるど真ん中に転移させた。