異世界転移〜残念、あなた様何も持ってないです〜
【異世界から来られし救世主達よ。どうか、我が世界を守って下さい】
その言葉が脳を響いて、眩い光から閉じた瞳を開けるとそこには、綺麗なドレスを着た人や騎士のような格好のコスプレをした人達が俺を含めたクラスメイトを囲んでいた。
「おお、我らの願いが女神に聞き入れてもらった。この者たちが異世界から来た救世主達だ」
白い長い髭を生やした王様ぽいっ、おじいさんが言うと周りから歓声が上がった。
『これで、我らは救われる』や『女神様は我らを見捨てなかった』と喜ぶ声が聞こえた。
「オイオイ、なんだよここは」
「この人達、誰よ」
と僕達側から聞こえた。僕も同じ気持ちだ。理解が追いつかない。
だって、さっき、チャイムが鳴って先生が教室を出た瞬間、教室が光に包まれて、女の人の声が聞こえたと思ったら、急にこの場所に変わったのだから。
僕達が困惑していると分かったら、盛り上がりが落ち着いて、中心に立っていた綺麗な女性が集団から一歩前に歩いて、僕達にお辞儀した。
「初めまして、私はこの国、クランクハイト王国、第一王女、ジュリナ・ギーナ・ライトマリと言います」
顔を上げる王女様は金色の髪に水色の瞳、ピンクのひらひらドレスを着ていた。王女様は本当に絵本に出てくるお姫様そのもので可憐で目を惹かれてしまう。
「私達はこの世界を滅ぼそうとする魔王に抵抗するために異世界から女神様の力を借りて、救世主を呼ぶ儀式をしていました。その、救世主があなたがたです。どうか、この世界を救って下さい」
王女様は頭を下げた。他の人達も頭を下げた。
つまり、僕達は今、異世界に来ていて、魔王に抵抗するために女神様にこの世界に連れて来られたらしい。
「あの……、なんとなく私達が呼ばれた理由は分かりましたが僕達も学校や生活、家族がいるんです。すぐに元の所に返してください」
とクラスのまとめ役の女子が臆することなく言った。そうよそうだと女子を中心に彼女の声で何人かのクラスメイトは返せと言葉を思いを言うが。
「それは……申し訳ありません。一度、呼んでしまったら……来てしまったら……、返すことは難しく方法が一つで……その方法が魔王を倒すことで……率直に申し上げますと魔王を倒す以外にあなたがたが元の世界に帰る事はできません」
王女が言ったその事実にクラスメイトの男達はゲームやラノベみたいだって、喜ぶ人達がいて、女子達の中にはお家に返してと泣く子が数人いて、周りが励ましていた。また、何人かは冷静にこの状態を整理していた。
僕はどうでもよかった。だって、元の世界に戻っても学校にも家にも僕の居場所はどこにも無い。そして、僕はいつでも脇役で誰の役にも立たない。それは、変わらないと思ってる。
「あなた様は何も持っておりません」
数時間後、魔法使いに言われた言葉でやっぱり僕は脇役だと確信した。
クラスメイトのみんなが個々に特別な力を持っていたのに僕だけ何も持っていなかったのだから。
ほら、やっぱり僕はいらない存在、使えない存在、必要とされない存在なんだ。
それは、どこにいても変わらない事だ。
よろしくお願いします