討伐参加
「どういうことですか?」
ユキユリに訊ねると彼女はそうじゃなと呟いて。
「お主の体に染みついている薬の辛気臭いにおいとイラつかせる汗のにおいの他にお主から別のにおいが……。おい、何で倒れた」
グサッと今日一番の鋭い言葉の刃が心に刺さった。
余りにもショックと悲しさでドサッと床に倒れてしまった。
しくしくと涙が出てくる。
ううっ、いや、体臭や汗のにおいが薔薇なんかの良いにおいでも困るけど、ユキユリみたいな綺麗な女の人に面と向けて、臭いと言われるとクリティカルヒットで精神的に大きなダメージだ。あと、もう一回何か言われたら、立ち直れない。
いや、本当にきつい。
「何をしておる。まぁ、そのままでもいいが」
と言いながら、背中に重みが、彼女が僕の背中を踏んでいた。
下僕だけども僕の立場って一体?
「お主のめんどくさいにおいとは別にそうじゃの。どこかで嗅いだことのある……。水? 海? いや、そのどちらでも無いにおいでどちらでもあるにおい……」
あっ、めんどくさいって、一括りにされた。
「生き物? 自然? いや、やはりそのどちらでも無いにおいでどちらでもあるにおい……我がどこかで確かに嗅いだ事のある……それは、どこで? いや、それよりもこのにおいが何なのか?」
彼女は踏んでいる僕の存在を忘れたようで自身に問いかけるように言葉にする。
僕はまだ、立ち直れなくてすすり泣きを零していた。
「どちらでもあって、どちらでもない……そうか! あれのにおいか……!」
彼女はそう言って、僕の事を完全に忘れたようで強く踏んだ。
「グえっ!!」
「あっ、お主の事を忘れて、少し強めに踏みつけてしまった。すまない」
「い、い、で……す」
搾り取るように言う。
「それとだが、少し確認することが出来た」
僕は痛みを抑えながら彼女の顔を見るといたずらっぽく笑って。
「その討伐に我も参加しよう」