人の世に無いにおい?
「うっ、うう、うっ」
あれれ、涙が止まらない。風呂に入っている時も体洗っている時も上がった後も涙が止まらない。体を洗いすぎて赤くなってるしヒリヒリする。
そんな僕を宿屋の朝食を食べ終わって部屋に帰ってきて彼女は。
「いい加減にせぬか。うざったしい」
ガン!
「ギャッ!!」
そう言って、思いっきりかかと落としされた。
あっ、涙が止まったけど体が痛い! 別の涙が出そうだ。
「いつまで、泣いておる! 本当の事だろう」
うっ、また悲しみの涙が出る。
「ううっ、あのですね……男には言われたらショックを受ける言葉があってで」
「うるさい。下僕は黙っておれ」
僕はユキユリの下僕だけど、下僕だけども酷い!
あっ、涙が流れてくる。ポロポロと流れる。
心なしか彼女の影には目が無いのに動きでゆらゆら動いて同情しているように見えた。優しい子だった。それだけで、少しはショックが和らぐ。
「僕、そんなに臭いですか? 人並みにはにおいに気を付けて来たのですが」
「ああ、臭いから臭いと言ったまでだがそのにおいは……おい、お主そのにおいをどこで着けて来た?」
「えっ、たぶん、僕の汚くて臭い汗で……」
「それもにおうが別の……どう、人の世に無いそのにおいを」
人の世に無いにおい?