討伐
「しかし、本当にこれは何なのか分からない。モンスターでさえもあやし、い!」
短剣を強くを目の前の存在に向かって斬る。だけど、肉を切る感覚も当たった感覚も受け止めた感覚もない。ただ、斬った場所は綺麗に斬られていて、ほんの数秒で斬られた場所は無くなっていた。
目の前の存在、討伐対象、液体のような個体のような半透明の水色の物体は何事も無かったかのように僕に向けて、体から出た触手をムチのように僕に振り下ろした。
僕はそれを避け、短剣をもう一度、振ると、今度はぐにゃりと体をゆがませて体に短剣を受け止める。離さないように沈みこませようとする。その傍らで短剣が刺さっている場所以外の体から触手のようなムチが現れ、一斉に僕に向けて放たれる。僕は短剣から手を離し、距離を取る。一呼吸をついて。
「っ、この個体はなかなか頭がいいな」
僕は腰にあるナイフと小瓶を取り、さっき攻撃してきたムチを避けながらモンスターに近づき、建物と勢いを使って、モンスターの頭上に飛ぶと小瓶の中身をぶちまけて、後ろに着地する瞬間、背中にナイフを投げる。
モンスターはプルプルと揺れると後ろにいる僕に振り向いて、消えた。本当に消えた。死体もかけらも残さず、刺さっていた短剣やナイフが刺さる存在が無くなると音を立てて、地面に落ちた。
「ふぅ、少しは休めるかな」
ため息をつきながらモンスターがいた地面に落ちた短剣とナイフを拾う。
僕がいる所は狭い路地裏なのでモンスターも大勢で来ることは無いが一体、一体倒すたびにまた新たに来る。たまに複数で来るので少しも休む暇がない。
討伐開始から結構の時間が経っていた。もう少しで朝が来る。朝日が港町を照らす。僕がいるこの狭い路地裏にも明かりは来てくれる。
僕は中身の無い小瓶をみて、もう一度ため息をつく。
「あんなふうに消えるんだったら、この毒が効いたのか分からないな」
すぐに苦しむ毒を作ったのに剣や魔法、毒を含めた攻撃、ダメージをある程度受けると消えてしまう。まるで、霧のように雲のように消えてしまう。他の生物やモンスターと違って、何も残さずに。
目も鼻も口も無く、スライムの一種かと思ったがスライムは倒した感覚や攻撃の感覚がある。あれには、全くそれらの感覚が感じない。だから、スライムでは無い。それに、命の感覚が無く、不気味だ。
そんなふうに倒したモンスターの事を考えていたら、路地裏の奥から三体ぐらいのがゆっくりとだけど確かにこっちに来ていた。
「考えるより倒していった方がいいか」
僕は大きく呼吸をして、意識を切り替える。
空気が震えるのを感じる。
【風よ 前にいる者達に刃となり一閃せよ 風よ 我の一部となれ】
二つの緑の光が現れると、一つは風の刃となってモンスター達を一閃に斬った。モンスター達は斬られた部分を復元しようと動き出す。
「少し遅かったですね」
その前に僕がモンスター達の後ろに立ち、素早く切り刻む。
そして、モンスター達は音も無く、消えた。