旅立ちと始まり
「ふむ、お主にしてはなかなか良いな。ああ、気にいった」
彼女は満足げに言う。
「もし、変な名を言っておったら、腕一本に加えて足一本も使えんようにしておったわ」
と彼女の影もうんうんと頷くように動いた。
危ない。本当に危なかった。旅が出来なくなっていた。
新たな門出が新たな死門になるとこだった。
下手な事を言わなくてよかった。
これからも気を付けよう。
本当に。
「それじゃあ、行くか。サクヤよ」
彼女はどこか不敵な笑みを浮かべ、歩き出す。
「はい! ユキユリ」
僕も彼女の歩みに合わせて歩き出す。
優しい雪は僕らの出発を送るようにゆっくりと降る。
これから、僕と彼女は様々な出会いと別れを体験する。
たくさん悲しい事もたくさん嬉しい事もあった。
彼女が生きる意味も僕が生きる意味を知った。
僕と彼女は一緒にいた。
例え、終焉を見ていても結末を知っていても僕は彼女といる事を選ぶだろう。
いや、定められた運命でも絶対に彼女のそばにいた。
僕は彼女と一緒にいた時間を、記憶を、決して忘れない。
僕、咲夜と彼女、ユキユリの話。
これは、雪が降る夜に咲くユリのような物語。