決意を込めて
「それで、今の今まで自分にスキルがある事を知らなかったサクヤは自分のスキルをちゃんと今、操れているのか? 少し、スキルを止めれるか?」
「……ん? どうやって止めるんですか?」
「そこからかよ!」
「しょうがないですよ。ある事自体知らなかったですから」
そんな、やっと、三輪車に乗れた子に対して自動車運転しろと言われた事と同じようなものだ。
「どんな感じに止めるんですか?」
「こう、ムンと止まれって念じれば大抵のスキルは止まるよ」
「アホの説明じゃの」
「そこで冷たく言い放たないでよ。可愛い声が台無しになるよ」
黙れ、なんかむかつくと理不尽な彼女が今にも拳でジャンさんの腹を殴りそうだが、それよりも僕だ。
止まれ。止まれ。止まれ。スキルよ止まれ。隠者よ止まれ。
「ムン!」
「グ八ッ!」
「はぁ~ダメですね。止まった感じがしません」
「そ、そうか、俺の方でも変わ……らな……い」
そう言って、彼女に殴られたジャンさんは静かに沈んで気を失った。
僕も少しむかついたので止めませんでした。すいません。
「どうやら、僕はスキルをうまく使いきれていないようです」
「そのようじゃの」
「でも、少しづつ使えるようになりたいです」
魔法の時のように。薬や毒を作るようになった時もナイフをうまく扱えるくなった時のように少しづつ。でも。
「だけど、それだったら、いつ僕のスキルが停止するのか分からない。そしたら、あなたの事をスキルで分かるかもしれない機会もいつになるのか分かりません」
「ああ、それについては我も思った。お主のせいで我が何者なのかと知るヒントを手に入れる事が遠のいた。その腹いせにお主を殴ろうとしたがその前に今倒れている者にむかついたから代わりに殴った。感謝するがいい」
そうだったんだ……。ありがとうジャンさん、あなたのおかげで僕は殴られずに済みました。ありがとう。
そんな思いを片隅に追いやって、僕は彼女に申し訳ない気持ちを持った。
観察系のスキルで彼女自身が忘れている事も見るだけで、彼女が何者か知りえるだろう。だけど、僕がスキルを制御できない内は知りえない。
僕は謝罪の言葉を言おうと口を開きかけたが。
「じゃが、それらで我の事を知られるのは嫌じゃ。それは我自身であっても……な。だから、我にとっては好都合な事じゃ」
そういう彼女の顔は満足げに笑っていた。
僕はその笑みに安心した。
「まぁ、お主がそれを扱えるくなっても我にとっては使えない事に変わりないだろうが我の下僕となったのだから扱えるようにしておくのじゃな。すぐにでも良いが。これから、長い探し物に出るのじゃ。お主の速さで扱えるようにしておくのじゃな」
彼女の言葉に僕は。
「ハイ!」
力強くいつか扱えるように決意を込めて答えた。