夢じゃない、吸血鬼の少女
目を覚めると、太陽の光に照らされた花畑で横になっていた。
起き上がると首筋に痛みが走った。痛みが走った首筋を触ると生暖かい血に触れ、手を広げると手のひら全部が血に染まっていた。昨日のことは夢ではないと語っていた。棺の中にいた少女が死んでいたのではなく、眠っていて、起き上がって、僕の血を飲んだこと。
僕は目を血にぬれていない手で覆った。
何、この状況。僕は痛みを感じる夢でも見ているのかな。そうじゃなかったら、なにこの痛い中二病の人が考えた展開。僕は普通に生きたいんですけど、ねぇ、本当にさ。夢だよね。夢でお願いします。本当にお願いします。
「おお、お主起きたか。死んだと思ったぞ」
鈴のような声が聞こえたけど、気のせいだ。うん、気のせい。だから、絶対、目を隠しているこの手はどけない。
「おい、聞こえているだろう。返事しろ」
ああ、なんか口が悪い言葉が聞こえるけど、幻聴、幻聴だ。
「ええい、いい加減に返事しろ」
脇腹に痛みが走って、再び、倒れた際に手を放してしまい。目を開けてしまった。ああ、これは現実だと認めるしかない。
目の前に僕の血を吸った少女が足を上げて立っていた。
「痛いです。ひどいです」
「やっと、返事したの」
返事っていうか、あなたへの抗議なんですけど。
「お主が気絶してから、我は暇だった。どうしてくれる」
「あっ、すいません」
「まぁ、分かればよい」
え、これって僕、悪いの。
「ところで、お主、ここはどこで今がいつだ」
彼女の面持ちが変わった。
「えっと、ここはシクラ王国のミカノハ町の近くの緑の峡谷ダンジョンの谷底で、新聖暦1789年の9月です」
僕は正直に話すと彼女はそうかとつぶやいた。そして、僕は彼女の三回目の笑みを見た。それは、恐怖を感じる物でもなく、妖艶に思えるものでもなかった。いたずらを考えた子供のような笑みだった。
「お主は今から、高貴なる吸血鬼の我の仮下僕となれ」
彼女はそう宣言して、僕を指さした。
僕は、
あっ、関わっていけないもの関わってしまったと悟り、扉に入ったことを後悔した。