何を見たのだろう
「まず、あなたの願いを叶う前にいろいろ後片付けと準備しなければありませんね」
「面倒よのぉ」
彼女はあくびをしながら眠そうに呟いた。
「大丈夫ですよ。館が完全に燃えていなくて町長さんが生きていれば早めに後片付けは終わります」
僕はそう言うと彼女はニヤリと笑う。
「我の影のおかげでな。その影も今、帰ってきた」
壊れて所々焼けている館の方から一つの小さな地面を覆う黒い存在が彼女の方に向かうと彼女の足元の影とぶつかり、合わさり、一つになった。
「最初にあいつらが館に火をかけていたらあいつらの罪が明るみに出なくなるのをなんとか阻止しようとする話し合いの時、急に火を消せばよかろうと言った時は驚きましたよ」
「驚け驚け。そして、敬え。我の影は炎さえも食らう可愛い奴じゃからな」
彼女の影は分断して、彼女を守る影と館を燃やす火を食らう影に別れた。
彼女の影は本当にしみじみ優秀だなと思った。
「今、帰ってきた影から情報が伝わってきたが館の中にいる死体には火の手が回らないようにしたと」
僕は何も言えなかった。助けられなかった何の罪も無い使用人、死んだとしても罪人となって欲しいあいつらに雇われた盗賊・野盗。そんな人達に僕は何も言葉を言えなかった。
そんな僕を見て、彼女が突然、腹に蹴りを入れた。
「グ八!」
「何、くよくよジメジメしておる。助けられなかった者達のためにもあ奴らに罪を背負わす。それが我らのすべきことだろう」
ああ、そうだ。あいつらを決して許してはいけない。
「そうでしたね。そのためにも町長さんに働いてもらはないとですね」
彼女は頷いたが、あっと何か思い出した声を出した。
「忘れておった。ずっと、しまっておったままじゃ」
彼女がそう言うと彼女の影が大きくなり、何かを吐き出そうとする行為を数回繰り返すと。ペッと言う感じの効果音が聞こえそうな動きと共に何かが、物体が、大きな質量が吐き出された。
「すっかり忘れていたが、何、問題はないだろう」
彼女はそう言っているが吐き出されたものは、生物は大きく器官を、全身を使って、怯えていた。
「あ、あああ、ああああ」
すごく怯えている生物、人間である町長さんは彼女に任せるまでは怒りと悲しみに満ちていたのに今はすごくおびえている。ぶるぶると体が細かく揺れている。だけど、顔は無表情であるのがなんか怖い。
「あの、どうし……」
「や、闇のな、な、なかに……アンナ……ヒッ……」
ドサッ。
僕が声をかけた瞬間、無表情だった顔が一気に恐怖で怯える顔になって心底おびえた声で何か言うと泡をふいて、気絶した。
えっ、影の中で何があったの? 何をされたの? 何を見たの?
僕はその答えを知りたくて彼女の方を見ると彼女はさっと顔をそらした。
「あー、これは我が悪い。忘れておった我以外の生物が、少しの間、影の中にいても大丈夫だが長くいると、その、いや、聞かない方がいい。本当にごめん」
彼女が素直に謝った。
町長さんは何を見たのだろう。