茨のような赤い鎖
いきなり彼女は何を言っているのだろうか? 分からない。
「お主は仮ではなく我の下僕となったのじゃ。だから、生きている」
彼女は本当に何と言っているんだ。
「お主の血はまぁまぁ甘美でありお主は余計な事は考えるが我を敬い忠実に従った。お主が仇を討とうと決めた時、お主は良い目をしておった。それが我にふさわしいと思ってな」
僕はただただ彼女の言葉を聞いていた。
「まぁ、さっきまでは下僕とするか迷っていたが我があの化け物の前に出ていった時のお主の情けない顔が最高だったのと我を守ろうとした事が決め手じゃ。我がわざわざあの化け物の前に出たかいがあるのぉ」
「えっ、まさかわざと化け物の前に立ったのですか?」
「もちろん。お主を試すために決まっておるだろう。」
開いた口が閉じない。すっごく怖かったのに。とても嫌だったのに。その気持ちを彼女は試したのだ。これは、一言文句を言わなければと音にしようとした時。
「我を守ろうとした時、とても嬉しかったぞ。ありがとう」
その一言で僕は文句を言うのを止めた。彼女に感謝されて、僕の頬は熱を持ち赤くなるのを感じた。
「加えて、毒を飲んだお主の血はより甘美であり合格点だったからもあるのぉ」
急激に頬の熱が下がった。
僕の一瞬の頬の熱を返してほしい……。いや、待てよ。
「あの、僕の血を呑んだって言いましたよね。僕の体には致死性の毒が駆け巡ってるんですけど」
彼女もこの目で見たはず、僕が自分の毒で苦しむところを。
「ああ、吸血鬼に毒は効かぬ。逆に毒を飲んだ者の血は深みと香り、味が良くなる。食べ物の隠し味やソースのような感じかの」
吸血鬼に毒は効かないんだ。じゃあ、彼女には毒類は効かないのか。
「だから、お主の体からにはもう毒は無い。我が全て飲んだ上に契約を結んでお主を回復させたからのぉ。感謝するがよい」
やっぱり、僕が感謝する側に……えっ、待って。
「あのどうやって回復させたんですか? あと、契約って何ですか!?」
僕の問いに彼女は僕の腕を指さした。
生きている事に動かせるこ事に驚いて気が付かなかったがそこには、僕の腕に、茨のような赤い鎖が腕輪のようにあった。存在していた。
僕はこんなのしていなかった。知らない。
混乱している僕に彼女は笑った。
「我のような高貴な吸血鬼には特別な呪術、魔法を知っていてな。その中の一つ、お主が今後一生我の下僕になる代わり、一度だけ、たった一度だけお主の命を救う呪術、いや、魔法を使ったのじゃ」
すると、彼女は僕の手を握った。そして、僕の腕にある鎖に触れた。
「それが、お主が我の下僕だという証。我とお主を結ぶ鎖。我の痛みをお主が受ける腕輪。今世、お主が死ぬまで我の下僕であり続ける契約証。お主の命を救った呪術、魔法の産物じゃ」
「お主はもう我の物。我の下僕じゃ」
彼女は満面の笑みで僕に言った。
私の考える吸血鬼像なので、そこはお願いします。