赤い糸
死? 死を与える。誰に? 僕に。もうすぐ死ぬのに。
「これは今まで我のために動いてくれたお礼じゃ」
彼女は何を言っているのだろうか。
「お主はもう死ぬからのぉ。そうなったら仮下僕の役目はどうしたって終わってしまう。だったら、今までの礼として我が直々にお主のために死を与えよう」
僕は毒で死ぬ。そのはずだ。
「さぁ、お主はどのような死を望む?」
彼女は可愛らしい声で僕にそう告げる。
「刺殺?撲殺?殴殺?銃殺?それとも、もっと違う方法で死ぬか?」
彼女は淡々と言葉を言う。
「お主は死を選ぶ事が出来る。このまま死ぬか。または自身が望む死を我が与えよう。どうする?今、お主が心から望む死はなんじゃ」
彼女のその言葉が僕の意識を鮮明にする。
意識は元気の死を思い出させた。元気はイヨさんのために。彼女のために死んだ。そして、彼女のそばで死んだ。
僕にはそれがとても羨ましかった。
大切なものを守って、そばで死ぬ。
僕には訪れない死に方だ。
僕はもう自身で招いた死を受け入れている。
だけど、もし望んでもいいなら。
何かを。
大事な物を。
こんな僕でも。
守って。
頭に浮かんだ考えを口から音にして、言葉にしようと思わなかった。
だけど、体が心が言葉にしろと動く。最後の命の灯を使って、告げさせた。
「ぼ、ぼっ、ぼくくはぁ」
「さぁ、お主はどのような死を願う!」
彼女は高らかに。どこか愉快そうに言葉を紡いだ。
「たたぁぃ、大切な何かを守って死にたい!!!」
咲夜は最後の力をふり絞って力強く望みを言葉にした。
すると、咲夜は力を生命力を出し切ると。
彼は自身の命の終わりを感じ、もう力が入らない瞼はゆっくりと瞳を閉じた。
「ああ、その望み、その願い、我が叶えよう」
そう言うと少女は自身の瞳から流れた一筋の涙が少女の唇を濡らすと透き通るような声で言葉を、呪文を紡ぐと。
少女は自身の唇と咲夜、死体と同じような男の唇を重ねた。
そして、二人の合わさった唇の境目から血が流れた。
その血が地面に落ちると血は赤い糸となり、二人の腕を繋いだ。