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蹴りながら転がしながら
「ちっ、我にここまでさせるとはなんて図々しい」
少女は一人そう言って、木の芽元まで運んだ咲夜を見下ろした。
いや、運んだのではなく蹴りながら動かしたのだが。その証拠に咲夜の体全体に倒れた時に無かった砂ぼこりや傷が出来ていた。
だが、蹴られながら移動させられた咲夜にはもうその痛みは感じない。何か言う事さえも無い。ただ、消えそうな命の灯を自覚無き欲求で消させないようにしている。
そんな彼を見下ろす彼女の瞳は紅い瞳だった。
「それじゃあ、我も行動に起こすか」
そう言った彼女は足を上げ、
そして、一気に咲夜を蹴った。
「っ、はっ」
それにより、咲夜は閉じていた目をゆっくり開いた。