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影は動かない
「おい、死んだのか?いや、間際じゃな」
仮下僕は微かに虫のような呼吸をしている。だが、それもいつまでか。
「まぁ、良い。我の計画に台無しになる事はなかろう。とりあえず、近くの木の根本まで運ぶか」
その言葉に我の影が答えるどころか何の動きもしない。
「ん?おい、聞いておるか?我がこやつを運ぶと言っておるのじゃ! 動け、我が影よ」
それでも、我の影は我に従わず、我の下にいた。
「影が反応しない?そんな事は今まで無かったはずなのに」
全くこれはどういう事じゃ。影は我の忠実な影であるのに。いつから、動かない。寝転がっているこやつに我が化け物にわざと攻撃を受ける所を見せようとした時は瞬時に影に我を守るように待機をさせていた時は感覚があった。
だったら、その後は。
こやつの光の輪が我に触れた時、その瞬間から影の動く感覚、思考、存在を感じ取ったか?
いや、感じ取っておらぬ。
まさか。
「こやつのせいか?」
我は足元にいる下僕、男を見た。
男は今にも色白い顔で今にも死にそうなふぬけた顔をしていた。