戦いの終わり
「えっ」
うん、そりゃあ、目の前で化け物に襲われそうになっている彼女を見て、叫んだらまさかの今まで欲していたスキルが発動するとは思わないし、そのスキルが光の輪でそれに化け物が触れた瞬間倒れたら、驚くは混乱するし、何が何だか分かんないし、とっさに出てくる言葉はこれだよね。うん。
「おい、何間抜けな声で、阿呆な顔をしているのじゃ。なんか、むかつくのぉ」
そう言いながら、彼女は僕に近づき、背中を蹴った。
痛い。マジで痛い。僕、結構ボロボロなんですけど。
「なんじゃ、その顔は何か言う事があるのか」
「いえ、何にもありません!」
僕はすぐさま立ち上がり、彼女と距離を取った。
また、蹴られそうだから。
「なぜ、離れる」
「いやぁ、ちょっと。あれです」
うん、あれだから。あっ、そう言えば。
「あれ、動ける」
さっきまで動けなかった体が、雷で痺れていた体が動いた。
雷の痛みも失われ、受けた事さえも無かったかのように。
「それよりもお主にはまだやる事あるだろう。さっさと終わらせてしまえ」
彼女は顔を動かし、動かない化け物を指した。
ああ、そうだった。今はあの化け物を、あの男を、元気を殺したあいつを殺さなくちゃいけない。
化け物に近づいたが化け物に襲われる気配は無かった。
化け物は動かせないのか、体は動かないのに目だけはよく動いていた。まるで、命乞いするかのように。僕を恐れているかのように。
ああ、やっと、殺せる。
ごめん。元気、イヨさん、遅くなったね。
二人の仇やっと取れるよ。
やっと、二人の無念を無くせるはずなのに。
僕は最後の毒で僕が作った中で最強の毒を取り出し、専用の瓶に入っている毒を見た。
それは、とてもとても透けていて綺麗な緑色だった。
そう言えば、元気はよく緑色の服を着ていた事を思い出して、少し笑みをこぼした。
そして、蓋を開け、化け物にかけた。
瞬間、皮膚と肉が焼ける音とにおいが、広がっていく。肉片であった所がこぼれるように消える音を出しながら小さな黒いカスとなる。毒がかけられた場所が速いスピードで体全体を覆うように広がりどんどん焼け落ちていく。
化け物は何も声を出さない。
ただ、目だけが生をすがるように速く動きまわっていた。
僕は腰からナイフを取り出して、まだ毒が回っていない心臓があるだろうと部分に大きく強く刺した。
目は一点に集中したと思ったらもう動かなくなった。
だけど、僕はその目が嫌で、もう二本ナイフを取り出すと両目に投げた。
これで、毒が回ったらナイフも熔けてしまうが。そうしたかった。
僕は化け物の体全体が毒で溶け落ちるまで化け物を見ていた。
彼女は何も言わずに少し離れた所で僕の行動を見ていた。
そして、まるで火が燃え尽きたかのように化け物の体を毒で溶かし終えると。そこに残っていたのは小さな黒いカスと毒で黒くなった土と人間の、男の骨だった。
ああ、仇を取ったのになんでこんなにやるせなくて悲しいんだ。