停止と発動
僕は必死に雷でしびれている体を声の方に向ける。
やはり、彼女は立っていた。化け物に自身の姿を見せるように。
どうして? どうして? どうして?
その単語が頭を駆け巡る。彼女は自分の姿を化け物に見せたのだろうか。
「ふむ、近くで見るとより造形が醜いのぉ」
彼女がそう言うと同時に化け物が叫んだ。咆哮を上げた。
そして、化け物が次の瞬間、彼女の方に飛び出した。
彼女に雷を纏った拳を振り下ろそうとしながら。
そして、彼女は意地悪い笑みで僕の方を見ていた。
彼女の影は騎士ではなくただの彼女の影で。
彼女にあの大きな拳が、直接当たったら体がもう二度と動けなくなるような雷が襲おうとしている。
その瞬間、僕はただただ思った。願った。
そんなの嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌ダ。嫌だ。イヤだ。イヤだ。イヤダ。イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ。
嫌だ!
そして、
止めろ。止めろ。止めろ。止めろ。止めロ。止めろ。ヤメろ。ヤメロ。ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ。
「ヤメロォォォーーーーーーーーーーーー!!!」
そう叫んだ時、頭の中で何かが響いた。
スキル≪透明な隠者≫を停止。
スキル≪隠者の怒り≫を発動。
その音と共に僕をの体から白い輪が、光の輪が現れると一瞬にして輪が広がり、周りを、森を、全てを包んだ。