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トンネルの先の月光と紅い月の光。そして、棺
今回は視点を変えます。
扉の中は真っ暗なトンネルで咲夜は石壁に手を添えて一歩ずつ歩いて行った。
しばらくして、ぴちゃぴちゃと雫が落ちる音が咲夜に聞こえた。
もうニ、三歩進むと、咲夜は靴に水の感触を感じた。
また、数歩したら、咲夜の靴は水に浸かった。
それでも、咲夜は歩みを止めなかった。
それどころか、水に気にするそぶりをしない。
靴が水に浸かりながらも歩いて行くと、咲夜の眼に淡い光が見え、淡い光はだんだん、強く広がって、咲夜を包んだ。
包まれた光から目を閉じた咲夜はゆっくりと瞳を開けた。
そして、目を見開いた。
扉の先、暗闇の先に、広がっていたのは闇を照らす淡い花畑と上に輝く二つの月の光。
上窓から指す、柔らかい月光。
天井に輝く紅い宝石の月の光。
そして、二つの光が重なる場所にガラス棺。
咲夜はまだ、知らないが。
棺の中に、目を閉じ、動かない白銀の髪の少女がいる。