毒は
ナイフを振るごとに、あいつの体を斬るごとに、あいつに投げるごとに、あいつの剣を、拳を避けるごとに僕の脈は、呼吸は、速くなる。だんだんと体が重くなる。
だけど、それはあいつの方が確実に僕よりひどい。
だって、
「ねぇ、さっきから呼吸が荒くなってるし動きが鈍ってきて、傷が増えていますね」
僕はあいつの剣をナイフで受け止めて訊ねた。
「はぁはぁはぁ、はぁっ。うる……さあ……い!」
あいつが呼吸を荒くして、受け止めたナイフを振り払って、僕に斬りかかる。
先ほどより速さが落ちる剣で、
その剣を避けて、僕はネタ晴らしをする。
「あなたのその〈超再生〉のはどんな傷もすぐに消えますが痛みや疲れは消えない。それはあなたも知っていますよね。だけど、もう一つ、あるんですよ」
僕は距離を取り言葉を紡ぐ、あいつは体を震わせて荒い呼吸を繰り返すだけで僕を襲おうとしてこない。いや、できないのではないだろうか。
「それは、毒ですよ。毒は消えないんですよ。どんな傷が治っても体内に毒は残るんですよ」
あいつが顔を強張らせる。
「それでは、僕の短剣に、ナイフに、たっぷり毒を染み込ませたナイフで斬られて、刺された上に地面に刺したナイフの毒が魔法石の魔法で、空気となった毒が充満するこの室内で大きな動きを繰り返したあんたはどうなるんでしょうね」
僕は質問するように、分からせるように言った。