戦闘①
キィィーン!!
男が振るう剣を防いで滑らせ矛先を変えさせるが男は剣から片手を離して、咲夜に硬く、大きな拳を振り下ろす。それをすれすれで外し、手を、体をひねり、回転と勢いを付けあごに蹴りを入れた。確実に衝撃を与えた。
だが、男は何事も無く、ダメージを与えられてすらいなかった。
男の体は硬く、衝撃が、ダメージが効かないようだった。
「やっぱり、元気のスキル使いますよねぇ!」
剣が再び、咲夜を斬りこんでいく。
「くッ!」
かわし切れず、深くはないが腕に一線の傷から血が咲夜の目の前で舞った。
それと同時に両手のナイフを男に向けて飛ばしたが、男に当たることは無く。
男の後ろの床に二つとも刺さった。
「死ねぇ!!」
男はナイフを持たない咲夜に拳を振り下ろしたが
「嫌ですよ!!」
咲夜は袖から新たなナイフを取り出し、男の目に向けて投げ飛ばし、後ろに下がった。
そのナイフは男の左目に刺ささった。
男がたじろいで乱暴にナイフを抜く瞬間、咲夜は続けざまに勢いを付け、首に、股に蹴り上げた。硬化のせいで痛みは無いが男にとってはムカつく事だった。
「クッ、チッ! ウゼェだよ!!」
男は左目を抑えながら、手に雷を纏わせて、大きく拳を振るう。
だが、ぶつかるあと少しで男は後退した。
そのままだったら、確実に咲夜に当たっていたが、あと少し、左目の傷が塞がっていなかったら、同時に間合いを詰められ、いつの間にか、左手に持っていたナイフで深く、喉元を斬られていた。
傷があるのは咲夜の方なのに、自分は全く傷が無いのに、男は追い詰められているように感じた。
少し、距離を測って事により、男は咲夜を改めて観察し、そして、分かったことがあった。
咲夜の戦い方が、普通じゃ無いことを。普通の冒険者の戦い方でも魔法使いの戦い方でも無い。その理由が何なのか男には分からないが、確実に咲夜は普通ではなかった。
「ハァ、やっぱり、傷が付かないんですね」
咲夜は独り言のような呟いた。
内心の少し笑みを言葉で隠すように。
その事は男に気がつかれる事は無い。
「でも、あなたを苦しめる事には関係ないですね、っと」
咲夜は腰に挿してある新たなナイフを両手にすると走り、そして、男は咲夜を観察していた事により行動が遅れ、間合いを詰め喉元を斬られた。避けたが少し、斬られた。傷が浅かったが、
「ガアッ、熱い、焼ける!」
ヨロヨロとまた、後退した。その喉元に斬られた場所に赤く火傷と共に浅く風によって、切り切られたような浅い傷が出来ていた。
「僕はコトノハ魔法であなたを苦しめさせるつもりは無いと言いましたが、別に他の魔法を使わないとは言ってませんよね」
その言葉と共に咲夜の持っているナイフに埋め込まれた赤い石と緑の石、火の魔法石と風の魔法石が淡い光を放っていた。